白昼夢


「仮免合格おめでとう!」
「ありがとうございます。」
「私から逃げない、んだね、壱馬くんは。やっぱ強いなぁ。」
「………。」
「ん?」
「なんか、スッキリした顔してますね?」



突き放したのは私だけど、壱馬くんはきっと逃げないんだろうな〜って密かに思っていた。案の定今朝出勤した私に、壱馬くんの予約が入っていて。見事一発で仮免を合格した壱馬くんは変わらない笑顔を私に見せたんだ。



「ちょっと悔しいです。…いややっぱすげぇ悔しい。」
「ごめんね。でも私、壱馬くんがいてくれたから結構色々乗り越えられたんだって思う。」


ジーっと私を見つめた後、ハアーって小さく溜息をついた。それから私に手を伸ばして頭をポンポンってする。え?


「そういう顔なら仕方ないです。俺莉子さんのそういう優しそうな顔が好きなんで。いつもちょっと悲しそうな顔ばっかりだったんで最初は単純に元気になって欲しいって思ってました。でも莉子さんを知れば知るほど欲しくなって…。―――本気で好きでした。でもきっと幸せにできるのは僕じゃない、ですね。幸せになってください。」
「壱馬くん…。」
「もう泣かないで。」


ふわりと抱きしめられる。この温もりに助けられた。忘れないようにしなきゃ。


「あー一つだけいいですか?」
「うん?」
「免許取れたら、最初の助手席は莉子さんに乗って貰いたい…。だめ?」
「…いいよ。」
「やった!」


ニコって笑顔を見せる壱馬くんは眩しい。私なんかが届くような人じゃない。だからこれは夢…いや、幻…。どっちでもいっか。私には直人がいる。これから先もずっと直人と生きていきたい。

やっと長い夢から覚めた――――…。


*END*