「あ、香澄ごめん。私行かなきゃ!」
「え、莉子っ!?」
「ごめんねっ!」
馬鹿みたいに走った。電車を乗り継いで駅から家まで馬鹿みたいに走った。直人の住む高級マンションの鍵をあけて部屋に入る。
「うお、どうした、こんな時間に。てか危ないから言ってくれたら迎えに行ったのに、…―――莉子?」
「ごめんねっ、直ちゃんごめんなさいっ!私っ、私っ…。」
ガバリと抱きついてそのまま安心できる温もりに顔を埋める。直人が傍にいるってことに甘んじて酷いことしてしまった自分をどうやって伝えたらいい?素直に言って許して貰えなかったらどうする?泣きじゃくる私をそのたくましい腕でギュっと抱きしめてくれる直人。
「浮気でもした?謝るなんて…。」
「うっ、ううっ…。」
「はは、冗談。まぁさ生きてれば色々あるよな。人に言えないようなことも。別に全部を言えなんて言わないからさ。けど辛いとか悲しいとかそういうのはちゃんと話して欲しい。一人で抱え込むのは莉子のよくない所だって分かってるから俺もなるべくちゃんと莉子のこと見ててやるから。だからこれからもずっと一緒に居よう…。な?」
「直ちゃっ…。」
「俺、愛してるから、莉子のこと。」
「直ちゃん、直ちゃん…。」
「なぁに?」
「ごめんね、私も愛してる…。」
「それなら安心。」
いつだって強く優しく引っ張ってくれる直人を、これから先も愛し続けたい。前を向いて真っ直ぐ進みたい、私らしく。
今更やっと心の奥底にあったモヤモヤが取れてとぎすまされた気分だった。