真面目な私の大きな一歩


「ん〜どうだろ。香澄って昔からやり手っていうか…。神谷教官と…あ、今の無し。」


つい出ちゃった、神谷教官の名前に苦笑い。隣の壱馬くんはふわりと微笑んでいて。


「嘘がつけないんですね、莉子さん。そんなとこも好きです。」


さらっと言われたけど、普通に照れる。日本人はそういう愛情表現苦手な人も多いのに目の前の壱馬くんはストレートにその想いをぶつけてくる。


「樹くんには、」
「言わないよ。あー汐莉さんももしかして彼氏いますか?」
「たはは。嘘が下手なのに私。」
「そっか。北人マジっぽいから。莉子さん達来るまでずっと汐莉、汐莉言ってて…。」
「…ごめんね。」
「はは、莉子さん何も悪くねぇし。けど仕方ないっすよね、好きになっちゃったもんは。俺も北人も、マジなんで覚悟しといてくださいね?」


壱馬くんの強くて熱い想いに胸が激しく脈打つ。この手を引いてふわりと抱きついたなら私達の未来は変わるのだろうか?冒険好きな友達と違って至って真面目に生きてきたけど、他に進む道はあるんじゃないだろうか?…そう思ったこともあるけど、いつだってちゃんとしたレールを走ることしかできないのが私で。今ここで一歩踏み出したなら、きっと未来は変わる。


「壱馬、くん。」
「はい、…―――」


やっぱり私は、大人だから酔った勢いぐらいないとできない。直球なんて今更投げられない。でもこの手を離したくない、ただそれだけだったんだ。