「キス我慢できなかった。」
ヘラって笑う北人。これはきっと魔法のキスなのかもしれない。だってこのキスをされてなかったら、わたしは今もまだ慎への未練を残していたんだと。
始まりなんてものはキッカケにすぎない。北人が全身全霊でわたしって奴を好きでいてくれているのが今は嬉しくてたまらないんだ。
「もう我慢しなくていいよ。」
「じゃあもっかい、」
指で頬を柔らかく擦っていた北人がまたゆっくりと近づく。だけど―――――「北人ー!店の前でイチャつくなぁ!」ガラってガラス張りのドアが開いて、暖簾の奥から健太さんが顔を出した。
「あ、ここ店の前か。ゆき乃入ろ。」
照れもせずわたしの手を取って歩き出す北人に、健太さんは思いっきり眉間にシワを寄せて、
「やっぱりゆき乃ちゃんが本命じゃねぇか!たく。」
「当たり前です。好きな子以外、この店教えたくないもん。」
「あ、そう、それはなんかちょっと複雑だけど嬉しいかも。」
ふは、健太さんまで丸めくるなんて。優しい顔でわたしにお水を出してくれる健太さんに「すいません。」って頭を下げると「青春いいなぁ。」沖縄訛りの声でニッコリ微笑んだんだ。