どうあがいても小説になりきれなかったSS以下の代物。名前変換なし。更新履歴にも載りません。「初詣に、連れて行ってあげようか」
「………………は?」
「まじに言ってます?」
「僕が嘘をつくと?」
「最初の約束破ってた奴がなんか言ってる」
「それについてはもういいじゃないか」
「へー。去年、私が何回月雲さん殴ろうと思ったか教えますよ」
「怖いね」
「でもやめなかったね」
「クソの横でもずっといると愛着湧いてきたっていうか……」
「何それ酷くなーい?」
「酷くない」
「三年近い付き合いでここまできたらもう何となくって部分も少なからずありますが」
「スポットライトの下で操り人形になってた君を見るのは実に愉快で楽しかったんだけどな」
「月雲さんが楽しんでいたのは人形操りであって観客席にはいなかったでしょ」
「その糸も実際には繋がってなくて、フリだったんだけどね」
「あんたも相当根に持ってんな」
「裏切ったくせに裏切られてショック受けてんなよ。と、私は言いたいわけですよ。この初詣で煩悩全て焼き払っていただきましょ〜」
「残念除夜の鐘はもう終わってるから無理」
「あっちゃー108どころじゃなかったかー!」
「トウマ君に言われましたよ。「あんたはなんで了さんの味方してんのか」って。交換条件だからって答えましたけど」
「その通りだよね」
「その通りです。だけども一点。多分私今なら離れてもそこそこやれると思うんですよね〜。ありがたいことにプロデュースしていただいたので」
「でも君は僕から離れない。そうだろう?」
「自信満々の月雲さん腹立つからやっぱ退社してこようかな」
「こっちの理由、わかります?」
「いーや。理解不能だね」
「愛したものに愛してと強請れない超アルティメット奥手童貞月雲さんが一人にならないよう気を使ってやってんですよ言わせんな恥ずかしい」
「ついでに最近トウマ君らと揉めてるみたいですね?なんか哀れなんで最後まで眺めようかなと。もうツクモの最後が私の歌手生命の最後なんでちょうどいいですし」
「あらら〜、僕のこと好きなの?」
「いやいや全く嫌い寄りの普通ですが、私は変わらず歌うことが好きなんで。ファンも、事務所も、友人も、敵も、月雲さんの計画だって本当はどうでもいい。言うなれば、これはそう……」
「友達づきあいってやつ?ああ、しっくりくるなこれは」
「友達?」
「ええ。月雲さんと私、フォーエバーフレンド」
「友達なら、お揃いのお守りでも買う?」
「商売繁盛祈願でもしますか」
「それはいいかな」
「縁故祈願?」
「寒いよそれ。冗談にしても」
「それな〜」
「きっと今頃、みんなそれぞれ仲良くやってますよ」
「僕らも行こうか」
「寒いから事務所帰って鍋でも囲みますか」
「いいね。スーパー、まだ空いてるかな〜」
「さあ……」
「あ、ちょっと待ってください亥清君からだ」
「なんだって?」
「暇?だそうです。やった〜ZOOLにお呼ばれした〜行ってきますね〜」
「あれ〜ちょっと僕は〜?」
「あはははははははは」
小学生というのはなんとも残酷な生き物で、悪気なく人を傷つける。相手が気にしていることはズバズバ言うし、自分の基準に当てはまらないものは淘汰する。さて、私も例に漏れずそんなクソガキだった。私は小学生の頃人をいじめて喜んでいたクソ野郎であった。通っていた地元の小学校で、当時クラスメイトだった一人がたいそう病弱らしくて、学校にあまり来ていなかったのだ。しかし人目を惹く赤い髪色と、花が咲いたような笑顔が相まって、クラスで密かな人気があった。
私はというと謂わばガキ大将的ポジションであったから、その人気者の男の子は当然自分の子分であるものと思っていた。
「りくくんあそぼう!!」
「ぼくはてんにぃとあそぶほうがすき…………」
衝撃だった。この野郎、と思ったし、気に食わなかった。大きくなった今では思い出す度にベッドの上でのたうちまわる苦い記憶ではあるものの、そうしたって当時私がしていたことは消えるわけもない。それ以来嫌がる陸君を引き摺り回し、嫌がらせをし、悪口を言いまくった。卒業近くには私の顔を見るだけで陸君は「ひっ」と小さく悲鳴をあげていたので、多分トラウマレベルまでやり尽くした。まじでごめん。ほんとにごめん。いつか再会したら土下座するから許して。はあ〜っとバイト中だというのにため息が溢れて、先輩であり店の息子さんでもある楽さんに「おい、客の前ではやめろよ」と注意される。
「はーい。てか先輩まじでいいんすか〜、まがいなりにもアイドルっしょ?」
「大声で言うな!……バレてねぇし、いいんだよ」
「届け先の事務所の可愛いマネージャーに惚れちゃったって、ウケる〜。ぱないっすわあ人気アイドルは〜」
「うるさい。それに今日はお前が出前届けてこい」
「は!?私は注文とる係っすけど!?」
「お袋が店開けて今日はこっちにいなくちゃいけないからな。くれぐれも余計なことを言わず、さっと行ってさっと帰ってこい。いいな?」
「うーっす……」
楽さんは一斉を風靡しているアイドル「TRIGGER」の一員……というのを知った時はひっくり返ったもんだ。最初の頃は「いえ、人違いです」で貫いてきたがそれで誤魔化しきれるわけないだろ!すぐにボロが出て今ではこんな感じである。とはいえアイドルには詳しくないし楽さんも好みではなく……いい先輩後輩でやらせていただいている。
「あ、お届け先は?」
「小鳥遊事務所」
「えーっと…………ああはい、あのビルですね」
地図を確認して蕎麦を肩に担ぐ。いってきまーす、と軽い口調で挨拶をしたが、思えば、ここがフラグだった。
追記>>「聞いてますか?」
「聞いてる聞いてる」
絶対聞いてねえ。そうは思うが口には出さない。彼女は人に強要されるのを滅法嫌う。それで出禁にでもなったら俺が嫌だった。
「あーだめだ」と原稿用紙をぐしゃぐしゃに丸めて床に放り投げる彼女。舞台脚本家を目指しているらしい。彼女とはとある縁で知り合うことになったのだが、それ以来こうしてたまに生活能力のない彼女を学校帰りにお世話する日々が続いている。散らかり放題の部屋のゴミをポリ袋に突っ込みながら、俺は机に向かうその後ろ姿を盗み見た。
「今回は何を書こうとしているんですか」
「学祭」
「うわ、それまた縁のない……」
「うるせぇ」
「俺が教えてあげましょうか?」
「くそ、だめだ」
「あー…………」
そして彼女は話を聞かない。正しくは、入り込むと戻ってこない。俺は諦めて掃除を再開した。多分、3時間は話すどころか飲み食いもやめてしまうので、俺はこれから食事を作り置きする必要があるだろう。「通い妻かよ」と同クラスの友人に馬鹿にされたことを思い出したが、そんなことはない、とかぶりを振った。
うちのクラスには、変わった奴がいる。
と、いうか、すげー古風な女子生徒。実家が武家、大層な箱入り娘と噂でクラスメイトからは遠巻きにされている。しかし俺に言わせれば、その時代劇から出てきたみたいにおかしな口調は逆に面白かった。その女子生徒は、あだ名をSAMURAIと云う。いやどこの大河だよ!
「和泉君。頼まれてくれるか?」
「何を?」
「顧問の元へ参上してくる。某が集めると言ったのおと、申し訳ないが代わりに先生に提出してほしい」
「ああ、あれな。オッケー。剣道部部長も大変だなぁ」
「大会が近く連絡事項が多くてな。すまぬ」
「気にすんなって。あー、でもその代わり、放課後俺残れそうもないんだ。ごめん」
「承知した。和泉君はあいどるおーでぃしょんとやらを受けるんだろう。良い結果になることを祈っておる」
「げ、どこから漏れたんだそれ」
「今朝、和泉君の友人が話していたのを聞いたんだ。…………いけなかっただろうか?」
「いや別にいいんだけど。でもやっぱ恥ずいじゃん?」
「?何を恥じる必要がある?」
「落ちたらどうすんだよ」
「和泉君は某の知る中で一番かっこいい男子であるから、落ちるとしたら相手に見る目がない時だけだろう」
んん〜!今惚れたわ!