どうあがいても小説になりきれなかったSS以下の代物。名前変換なし。更新履歴にも載りません。小学生というのはなんとも残酷な生き物で、悪気なく人を傷つける。相手が気にしていることはズバズバ言うし、自分の基準に当てはまらないものは淘汰する。さて、私も例に漏れずそんなクソガキだった。私は小学生の頃人をいじめて喜んでいたクソ野郎であった。通っていた地元の小学校で、当時クラスメイトだった一人がたいそう病弱らしくて、学校にあまり来ていなかったのだ。しかし人目を惹く赤い髪色と、花が咲いたような笑顔が相まって、クラスで密かな人気があった。
私はというと謂わばガキ大将的ポジションであったから、その人気者の男の子は当然自分の子分であるものと思っていた。
「りくくんあそぼう!!」
「ぼくはてんにぃとあそぶほうがすき…………」
衝撃だった。この野郎、と思ったし、気に食わなかった。大きくなった今では思い出す度にベッドの上でのたうちまわる苦い記憶ではあるものの、そうしたって当時私がしていたことは消えるわけもない。それ以来嫌がる陸君を引き摺り回し、嫌がらせをし、悪口を言いまくった。卒業近くには私の顔を見るだけで陸君は「ひっ」と小さく悲鳴をあげていたので、多分トラウマレベルまでやり尽くした。まじでごめん。ほんとにごめん。いつか再会したら土下座するから許して。はあ〜っとバイト中だというのにため息が溢れて、先輩であり店の息子さんでもある楽さんに「おい、客の前ではやめろよ」と注意される。
「はーい。てか先輩まじでいいんすか〜、まがいなりにもアイドルっしょ?」
「大声で言うな!……バレてねぇし、いいんだよ」
「届け先の事務所の可愛いマネージャーに惚れちゃったって、ウケる〜。ぱないっすわあ人気アイドルは〜」
「うるさい。それに今日はお前が出前届けてこい」
「は!?私は注文とる係っすけど!?」
「お袋が店開けて今日はこっちにいなくちゃいけないからな。くれぐれも余計なことを言わず、さっと行ってさっと帰ってこい。いいな?」
「うーっす……」
楽さんは一斉を風靡しているアイドル「TRIGGER」の一員……というのを知った時はひっくり返ったもんだ。最初の頃は「いえ、人違いです」で貫いてきたがそれで誤魔化しきれるわけないだろ!すぐにボロが出て今ではこんな感じである。とはいえアイドルには詳しくないし楽さんも好みではなく……いい先輩後輩でやらせていただいている。
「あ、お届け先は?」
「小鳥遊事務所」
「えーっと…………ああはい、あのビルですね」
地図を確認して蕎麦を肩に担ぐ。いってきまーす、と軽い口調で挨拶をしたが、思えば、ここがフラグだった。
「あ、あの〜」
「おい、陸どうした?いたた、背中に爪たてるな!」
「………………」
「ひっ」
「陸さんど、どうしたんですか?ただのお蕎麦屋さんですよ?怖くないですよ〜」
「…………山村蕎麦屋で〜す。お届けにあがりました〜」
「ひぃっ!この声、や、やっぱり」
「知り合いか?」
「違うよ〜ただの蕎麦屋のアルバイトです陸君もそんなに怯えなくて大丈夫っすよ〜」
「覚えてるじゃん!すっごい覚えてるじゃんその顔!な、どうしてここが?まさか天にぃを脅」
「そんなことするわけないだろ」
「ごめんなさいごめんなさい」
「おいおい。アルバイトさん、あんたうちの陸になにしたの?尋常じゃない怯えっぷりなんだけど……」
「いやあ〜あはは…………。まあ十割私が悪いんで、早いところ消えますね」
「帰れえ!」
「あ?」
「ひえっ…………」
「あ、ごめつい癖が」
「なんの癖?ねえ!なんの癖なのそれ!」