同居人は甘えた幼馴染 (10/10)






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俺が美和ちゃんのアパートに訪れて1時間経過した頃、アパートの方へ向かって歩いてくる足音が聞こえてきた。

闇夜の中だからその人物の顔までは確認できなかったけれど、靴音からして女性だというのは間違いなくて俺は花壇の縁から立ち上がった。

そして、その女性がロビーの自動扉の前に差し掛かった瞬間に顔が見えて俺は駆け足で女の人の後方に近付いてそのまま女性の体を引き寄せて抱擁ほうようした。

女性は突然のことに驚愕きょうがくしていたけれど、俺がすぐに抱擁ほうようしながら発した名前を聞くと安堵あんど吃驚びっくりの表情で固まっていた。


「美和ちゃん。」

そうこの女性こそが俺の幼馴染みで本気で好きな相手の美和ちゃんなのだ。


「…湊?」
「美和ちゃん、会いたかったー!」

俺は未だに驚愕きょうがくする美和ちゃんに構いもせず抱擁ほうようする腕を少しだけ強めながら毎回必ず放つお決まりのセリフを発した。

だけど、それは美和ちゃんの言葉と手によって見事に交わされてしまい俺と美和ちゃんの距離が離れてしまった。

俺の方を振り返った美和ちゃんに "どうしてここにいるの?" と尋ねられて "美和ちゃんに会いたかったから" って返しても美和ちゃんには通用しなかった。

仕方なく本当のことを告げると、案の定美和ちゃんからは吃驚びっくりと同時に罵声を浴びせられた。

それでも俺はどうしても実家には帰りたくなくて"美和ちゃんの家に暫く泊まらせて" って言うと、案の定美和ちゃんからは拒否の言葉が返ってきた。


仕舞いには…

"友人のところに行け"

"彼女のところに行け"

と言われてしまう始末。


"友人は彼女と同棲中の奴と実家暮らしの奴だから無理。"

"彼女はいない"

と告げると暫く考えてから美和ちゃんから了承の言葉を貰えた。

なんだかんだで美和ちゃんは俺に優しいんだ。


まあ美和ちゃんはきっと俺の気持ちなんて気付いてないんだろうな。


"大好き" って言いながら抱擁ほうようしても相変わらずの冷たさだし。

俺、いつまでこの関係に絶えれるだろうか。







──そんなこんなで俺の少々強引な押しから大好きな幼馴染みとの同居生活がスタートした。





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