君にしか甘えられないんだ (3/8)






「あ、そういえば…」
「え?なに?」


考え事をしていたらまたもや突然香奈が思い出したように口を開いた。



「…一昨年の9月頃だったかな?営業で外出てる時に湊君見たんだよね!」
「え?なにそれ?」

香奈から発せられた言葉には理解できなかった。


香奈は二度湊と会ったことがあってその2回とも本当に偶然にも湊が私のアパートを訪れた時で香奈とはそのどちらとも私のアパートで家飲みをしようとしていた時だった。

だけど、それ以外に香奈が湊と会っていたなんて初耳で私は驚愕きょうがくした。



(しかも一昨年の9月って…。
2年近く前じゃないの!!)


香奈が "湊を見かけた" という月日にも勿論私は驚きを隠せなくて思わず心の中でそう叫んでしまった。


「…見かけただけだから声はかけてないけど、女の子と一緒だったよ!あれは間違いなく彼女だったね!」
「え?彼女?」



湊が彼女といたと聞いて…

何故だか無性に興味を示してしまったのだ。


それに私といる時の湊と彼女といる時の湊のことを知りたいと思ったから。


湊が私といる時はかなりの甘えん坊な感じだからそれが彼女といる時にはどうなのか──。

抱擁ほうようはしまくるのか──。


そんなことが物凄く気になったんだ。



「香奈、どんな感じだったの?」
「は?なにが?」
「湊だよ!その彼女といる時の湊がどんな感じだったか聞いてるの!」
「どんな感じって…」

私が突然、身を乗り出す勢いで尋問したもんだから香奈は驚愕きょうがくしていたけれど、少し思考えながらも私の質問に答えてくれた。


「…クールな感じだったかな? 湊君からはその彼女が "好き" なのか表情では読み取れなかった。どちらかというと彼女の方が "湊君大好き!" って感じだったよ。」


香奈のそんな言葉にもう何度目かわからない驚愕きょうがくな内容だった。


(湊が…クール?なにそれ?)


私といる時とは全くの正反対の湊の姿で再度心の中でそう呟いてしまった。


何故なら私は "クールな湊" なんて全く知らないし見たことなんて一度もないから。



「…なんでそんなこと聞くの?」
「…違う…」
「は?」
「全然、違うの!」
「なにが?」
「私といる時の湊と全然違う!!」
「え?どういうこと?」
「私といる時の湊はクールなんかじゃない。どちらかというと甘えん坊な感じで私の姿を見ると必ず抱擁ほうようしてくるの!」
「え?それ本当?」
「本当だよ!今では同居してるから1日に何回も抱擁ほうようして来るんだから!」
「まじ?あの時見た湊君とは正反対じゃん!」

私の言葉に香奈も吃驚びっくりしたのかそんな声を荒げていた。





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