「え?」
「子供の頃は確かに父親が社長だし手に入らない物なんてなくて…それを自慢気に思ってたよ。……でも、周囲の目や周りの環境とか知るとさ、親に
「…私、麻弥のそういうとこ好きだわ!」
「は?何よいきなり。」
「いや、肩書きは "お嬢様" だけど、外見も性格も気取ってないからさ。」
――"気取らない" 。
亜季にそう思ってくれていたのは素直に嬉しかった。
まだ父親に反発していない頃に――。
何度かお金持ちが集まるパーティー系に両親に連れて行ってもらったことがある。
その時のお金持ちのお嬢様やご子息とやらに
特に "お嬢様" は本当に自信満々で
まだ幼かった私でもそれが "恐怖" でしかなかった。
だから、将来…大人になっても周囲に好奇の目で見られないように…。
そう心に誓って――。
今、父親に反発してたりする。
まあ反発といってもただ父親とは昔から折が合わない部分はあったんだけど。
「……そういえば、珍しく佐倉が麻弥の前に現れないね。」
亜季のそんな言葉に思考しながら箸を進めていた私は我に返った。
まだ亜季に話していなかったことに気付いたのだ。
「……武斗ならもう来ないと思うよ。」
「え?なんで?」
「…ほら私のこと "尾行" してたって言ったじゃん?」
「うん!」
「…あの "尾行" は元々あの人が武斗に命令したことだから武斗に伝えたの……"もう尾行はしないで" って。」
「え?そうなの?…でもさ、佐倉って麻弥の父親に逆らえないみたいな部分あるよね。大丈夫なの?」
「…それに関しては大丈夫。お母さんに電話で話しておいたから。」
「あーー麻弥のお母さん!逞しくて好き!」
亜季のその言葉にはもう苦笑いしか出てこなかった。
だけど、亜季の言うとおり――。
私の母親は昔から普段はどこかおっとりしていて何があっても…今の私みたいに家出をしていても "あの人" みたいに強引に実家へ戻そうとせず、私の意志を尊重して見守ってくれている。
そして、"あの人" が唯一逆らえない人物が私の母親なのだ。
普段本当に "怒る" という表現が母親にはないから…怒らすとどうなるのか多分… "あの人" が一番わかっているはずだから。
