記憶と約束

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――昼休み。

もう日課のようになっているのだけど、昼食には必ず亜季と食堂に来ていた。
亜季は毎回、食堂にあるメニューからその日食べたいと思うものを注文していて―私は啓人ひろとと同居するようになってから作り始めたお弁当を持参していた。
啓人ひろとからは私個人の生活費として毎日といっても過言ではないくらいお金を貰っていて――それだけでも申し訳ない気持ちでいっぱいだからせめて昼食代は節約しようとお弁当を作るようになったのだ。
元々、私は家事は得意な方だった。
実家には執事もいればメイドもいるけれど、母親から時間あれば家事を教わっていたし母親もまた家事は得意な人だったから。

――そして、いつものように亜季と食堂に入り、亜季が注文しにカウンターに行ってる間に私は空いてる席を確保して亜季を待っていた。

――数分後、亜季はカレーライスのお皿と冷水の入ったコップを載せたトレーを持ちながら私の確保した席の向かい側の席に腰掛けた。


「…お待たせ!」
「ううん。それより今日はカレーなんだね。」
「昨日うどんにしたし一昨日はラーメンだったから麺類以外がよくて。」
「なるほど。」

亜季の昼食はほぼこの食堂にあるメニューから選ばれる。
そして、日替わりで食べる物も変わっているのだ。

「では、いただきまーす!」
「いただきます!」

亜季の食事前の挨拶のすぐあとに私も挨拶をしてからお弁当の蓋を開けてお箸を持ち食事を始めた。


「……麻弥のお弁当いつも美味そう!」
「そう?ありがとう。」
「ねぇ、それってさ〜啓人ひろとさんにも毎日作ってあげてんだよね?」
「うん、そうだよ。」

毎日の献立を考えるのは大変だけど、朝早起きして自分の朝食とお弁当と昼間に起床する啓人の分の昼食を準備してから念の為啓人ひろとには "冷蔵庫に昼食あるよ。" のメモをして家を出る。


「いいな〜!毎日麻弥のご飯食べれて啓人ひろとさんが羨ましい〜〜!」
「なにそれ。そもそも啓人ひろとにはいつもお世話になってるから私なりの感謝の気持ちで家事してるだけだよ。」
「…前から思ってたけど…」
「…なに?」


突然、亜季の表情が真剣になったから私は驚愕きょうがくしながら亜季に問いただした。


「麻弥ってさ、お嬢様なのに家庭的なとこあるよね。お嬢様って親にすがってばかりで何もできないイメージしかなかったけど、麻弥はそうじゃないよね?」
「……。」


亜季の "お嬢様" って言葉に胸が少し痛んだ気がした。


亜季は悪気があってそんなことを言葉にしたわけではないとわかっているのに――。

何故なら今の私には "お嬢様" という言葉が重りのように感じていたから――。


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