記憶と約束

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【Side:武斗】



――昔からずっと麻弥ちゃんだけを見てきた。
麻弥ちゃんだけが僕にとって特別な存在だった。
僕の父親も "佐倉グループ" の会社社長で "七瀬財閥ななせざいばつ"とも関わりがあって麻弥ちゃんと知り合うなんて必然的だった。


――幼少期に初めて麻弥ちゃんと会った日も僕は鮮明に覚えている。
当時は僕も麻弥ちゃんも幼くて両親と一緒に会う機会が多く僕は両親と共に "七瀬財閥" が主催のパーティーに出席した。
そのパーティーで初めて麻弥ちゃんと出会ったのだ。
父親と隣に並び、"七瀬財閥" の社長である七瀬拓朗さんに御挨拶をしに行くと七瀬社長の隣には女の子がいた。
その女の子を見た僕は一瞬で恋に落ちてしまった。
所謂いわゆる、一目惚れだった。

七瀬社長から "娘の麻弥" だと紹介されて名前を知れたことにも何だか嬉しかった。
そんな麻弥ちゃんは凛としていて華麗で笑顔が素敵で本当に僕にとってお姫様みたいな女の子だった。
それからも "七瀬財閥" との関わりは続いて麻弥ちゃんとも会えば会話をしたり、遊んだりするようになった。

だけど、僕も麻弥ちゃんも小学六年生になった春に――麻弥ちゃんは突然…中学を私立から公立に希望変更したと七瀬社長と僕の父親が会話をしているのを偶然聞いてしまったのだ。
当時、僕と麻弥ちゃんが通っていた学校は所謂お金持ちだけが集まる名の知れた学校で幼稚舎から高校舎のエスカレーター式だった。
だから当たり前のように麻弥ちゃんと中学も高校も一緒に進学できると思っていたのにそれを聞いた僕は悲愴感で一杯になってしまった。

けれど、今思えばその時からだったかもしれない。
麻弥ちゃんが僕と距離を置くようになったのは…。
でも、僕はどうしても麻弥ちゃんと離れるのが嫌で "せめて高校だけでも" ―と思い、麻弥ちゃんと同じ公立高校受験を決意した。

それを麻弥ちゃんに話をすると麻弥ちゃんには批判の言葉を浴びせられてしまったけれど、僕は頑なにそれを拒み無事に麻弥ちゃんと同じ公立に入学したのだった。

だけど、高校生になっても麻弥ちゃんと同じクラスは愚か会話をする機会は勿論…幼少期のような距離を再度縮めることができないまま高校生活二年目を迎えたある日のことだった――。


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