君の嫉妬と優しさ ( 20/ 20 )


──別に俺は佐々木が勝とうが負けようがどうでもよかった。

だから佐々木が俺との1 on 1勝負に "勝ち負け" を予測していた訳じゃない。

それに最初から俺は沙結さゆを手離すつもりはなかった。


「…別にそんなこと思ってたわけじゃねぇよ。でも俺の得意分野なんだよ。…沙結さゆがどうとか関係なく…。1 on 1が得意なだけ…。」
「そうそう!俺もさ、律と1 on 1勝負して勝てたことないから安心しなよ!」
「…え?じゃあ…。勝負に挑んだのは何でですか?」
「…勝負挑まなきゃお前しつけぇじゃん。…それに沙結さゆの周りをウロチョロされんのも困るし…。」
「……え、それだけ…ですか?」
「…おう。」
「…なんですかそれ…!…勝負なんて挑まなくても…。最初から俺に勝ち目なんかなかったんですね…。」



佐々木はそう言うと立ち上がって─俺に真っ直ぐな瞳を向けて言葉をつむいできた。


立川たちかわの事そんなすぐにはまだ諦められません!…でも、もう2人の邪魔はしないので安心してください!…これからも "先輩" と "後輩" として…ご指導の程よろしくお願いします!」


佐々木はそう言葉を放ち頭を下げてからその場を立ち去って行った。



「2人の邪魔しないって!よかったじゃん。」
「…そうだな。」


だけど、俺はまだなんかモヤモヤしたような感覚が消えていないような気持ちだった。

でも、佐々木のあの言葉は嘘を言ってるようには見えなくて─ "邪魔しない。" っていうのは本当なんだと思う。

──だから俺は少し安心していたんだ。






──でも、それは合宿が終わるまでの期間だけ…。
ということはこの時はまだ想像もしていなかったんだ───。



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