「すげー千鳥足」
「てつろーくん、いつもすまんの」
「いいってことよ」

 ぽやぽやとする頭、まっすぐに進まない足。そこにあったからついつい絡めた腕。冷たい夜風に当たり、隣を歩く鉄朗くんにお礼とはいえないお礼を言うと、ハタチそこそことは思えない会話が繰り広げられている。

「ハイボール毎回濃いめで頼んでたから、こうなるとは思いました〜」
「飲み会っていいよねー、楽しいよねー」
「気づいたら俺がなまえちゃんのこと送る係になってたのも、楽しいよね〜」
「あはは〜、いつも助かる〜」

 2つ向こうの駅に住む鉄朗くんは、サークルの飲み会でたっぷり酔っぱらう私をいつからかアパートに送る係になっていて、言われてみればそうだなぁ、なんて今さら言われて思ったりして。

「はい、着きましたよー」
「わーい!ついたついた〜」
「鍵ある?」
「ん〜あるよ〜、鉄朗くんあけておくれ〜」
「はいはい」

 靴を脱いでフローリングに上がると、壁に手をついてよろよろと振り返った。鉄朗くんが可笑しそうに笑っているのにつられてへらへら笑うと、口癖のように言うそれを鉄朗くんは今日も言う。

「俺が居ないときは飲み過ぎちゃダメ、わかった人ー?」
「はーい!わかりました〜」
「男はみんな狼!オッケー?」
「んー……おっけー」
「じゃあ鍵締めろよー」
「ねーねーてつろーくんよ」
「なんだね」
「鉄朗くんは男だけど狼じゃないんだね」

 閉まろうとしていた玄関扉が少し開き、困ったように扉に寄りかかりながら、あー、とか、んー、とか頭に手を当てて言い出した鉄朗くんは最終的に腕を組んでやっぱり困ったように言った。

「今んとこ羊の皮を被った狼ってとこかな」

つづき


2021