平凡を望む


あの日、私は逃げた。なぜ逃げたか聞かれると、外の世界を、私が今まで生きてきたこの世界とは違う世界を見てみたかった。染み込んだ血は抜けないけれど、血に濡れない自分の姿を見てみたかった。戦闘種族同士のハーフで産まれた私がそんな事を思うのはおかしいのかもしれないけれど、16歳の誕生日の前日にそう思ったのだ。そして私は団長という名のバカに辞職願いと書かれた封筒を置いてきた。置いてきただけ。直接言えるはずない、許可が降りるわけがない。そして良くて半殺し、悪くて殺されかねないのだから言うはずがない。そして運良く誰にも会わずに小型脱出ポットに乗り込み、春雨を離れた。行き先は地球に決めた、なんか面白そうだし、綺麗だからという適当な理由だ。地球に着くまでに春雨に、第七師団に入団するまでの経緯を思い返したが、一族が春雨と戦争し、負けた。その時に団長に出会い、ハーフって分かった途端に持ち帰りされた。いやらしい意味じゃなくて、血塗れで負傷中の私を肩に俵抱きして船に連れて行ったと思えば、入団するか死ぬか選べとの選択肢。死にたくないし、一族の仇である春雨だが、入団するしかなかった。それから数年間、団長の尻拭いやら上からの命令やら尻拭いをやった。そしていま、この時から私はその生活から解放される。戦いが別に嫌なわけじゃないけど、今はできるだけしたくない血はみたくない。
わたし、普通の女の子として生きていきます。