この世は私に甘い


「はーい、みたらし3本ですね!」

笑顔で注文をとり、店主から渡されたお皿を注文したお客様の元へ持っていく。あれから数年が過ぎ、私は団子屋でアルバイトをしている。今じゃ立派な看板娘だ、きっと。春雨を出た後、地球へ着陸し仕事探しをしていると運良く、目の前で団子屋のバイトのチラシが貼られた。これは私のために今募集をかけたのではないかと思いながら、すぐに申し込んだ。受かったが、昔ながらの店らしく、今までも明るい髪色は認めていないので金髪は良かったら黒くしてくれないかな?と言われ、よし、ならば染めよう!と近くのスーパーで染め粉を買い、女将さんに染めてもらったのだが、髪が特殊なようで一切染まらなかった。困った、苦笑いしかできなかった。「んー、どうしましょう」と悩む女将さんが急にニパッと笑顔になった。「ウィッグにしましょ!」私もしてみたくて黒髪ボブ買ったんだけど似合わなかったのよねえ〜歳っていやだわもうっ!と言いながら奥の方から女将さんが買ったウィッグを持ってきた。さっと被せられ、固定される。
「いやーん!かわいい!!」とまるでJKのようなノリで言う女将さんに引き攣った笑顔と共にお礼を言った。それからずっとこの団子屋さんで働いている。そして、その間、私の手が血に濡れることはなかった。

「空いてるかィ?」

「いらっしゃい、沖田さん。手前から二つ目のテーブル席が空いてるからそこにどうぞ!」

常連であり、真選組一番隊隊長の沖田総悟だ。初めこそは警察と聞き警戒したが、よく考えると春雨ではあるが、私個人の情報など持っているわけなく、私がビクビクしなくても良い相手だったのだ。沖田さんに注文を聞きに行くと、「みたらし二つと、あんこ一つ」「はーい!あれ、今日もサボりですか?」「も ってなんですかィ俺がいつもサボってるみてーな言い方じゃねーか」「なら今日は非番なの?」「非番でさァ」「ふふ、ならお団子持ってきますね!」非番の日になんで制服着てるの?とは聞かなかった。あと20分くらいかな、副長さんが来るまで。ならばそれまでゆっくりさせてあげようと思う。ふと沖田さんの方を見ると、パチリと目があった。口を開いたかと思うと、「はやくしろ」と口パクで言われた。それに対し「はーい」と私も口パクで返し、少しの笑いをこぼしながら、私は沖田さんのために団子を取りに行くのであった。