ニキビのせいで
「あ、ニキビできてる」
お昼休み。
わたしが億泰くんの顎を指すと、億泰くんは見えそうで見えない自分の顎のニキビを探し始めた。
「億泰くんのこと好きな人がいるのかもね!」
「おっ、おれのことを?!?!
そうなのかぁーーー!?」
「たっ、ただの迷信だけどね・・・」
興奮して米粒を口から飛ばしながら立ち上がった億泰くんを、慌ててなだめる。
「顔にニキビができたとき、そのニキビができた場所で恋愛を占うの。
中学校で流行ったんだけど・・・」
「それで、おれはモテてるってことなのかァ!?」
モテてるとまでは言ってないんだけどな・・・とは思いつつ、目を輝かせる億泰くんの期待を裏切れず、苦笑いでうなずく。
「確か・・・おでこ、顎、左頬、右頬の順に、『想い、想われ、振り、振られ』だったかな」
「おっ、おれが・・・誰かに想われている・・・くぅ〜〜」
「おい、泣くこたーねーだろ、なにもよォー」
なんだか見たことあるような場面だな、と思いながら、空になったお弁当箱を閉じる。
「なまえ〜、帰ろうぜ〜」
「あれ、億泰くんは・・・居残り?」
毎週月曜日、億泰くんは数学の居残りをさせられる。テストの点数が悪いだけじゃなくて、早弁したり、宿題をやらなかったりして。だから月曜日はいつも仗助くんと2人だけで帰るのだけれど、これが1週間の楽しみ。
仗助くんファンの「ばいばい」ラッシュを通り、仗助くんファンの妬み視線をようやく抜けると、仗助くんが口を開いた。
「なぁ、なまえも鼻にニキビ出来てるぜ」
仗助くんがこんなデリカシーのない発言をするとは思わなかった。思春期の少女になんてことを言うんだ。
戸惑いと驚きで仗助くんを見ると、目が合う。
「鼻のニキビってよォ、確か『両想い』じゃなかったかァ〜?」
「えっ、そうだっけ!」
そんなことを言ったら世の思春期学生は全員両想いじゃないのか、と思いながら、鼻先に発見したニキビをいじる。
「つーかよォ、お前好きなやつとかいんの?」
戸惑いと驚きで仗助くんを見る、本日2回目。
「す、好きな人はいないかな・・・いいなぁと思う人はいるけど」
「へぇ・・・で、誰よ?」
今日の仗助くんはどうしてこんなにぶっ込むんだろう。そんなに期待した目で見ないでほしい。
「両想いかもしんねーぜ」
「・・・本当に、ただかっこよくて、優しくて、強いなぁと思うだけなんだけどね」
「おう」
「仗助くん、だよ」
「お〜〜い仗助〜なまえ〜、アイス食いに行こうぜ〜〜」
後ろから聞こえた声にびっくりして振り向くと、遠くから小走りに走ってくる億泰くんの姿が。
億泰くんに気を取られていると、いつの間にか仗助くんの顔がわたしの耳元に近付いていて。
「やっぱり両想いだったな」
「今朝アイス見に行ったらよォ、今日は午後から営業しますって書いてあってよォ〜!
やっぱりアイス食わねえと1週間乗り切れねぇよ、なぁ仗助!」
顔が真っ赤なわたしと、いつもより上機嫌な仗助くんに気付かない億泰くんの鈍感さに少し感謝した。
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ときどきトキメキ