「っ…!ゼロ!」
落下の衝撃で炎に包まれるヘリ。その近くに転がる彼を見つける。
全身傷だらけだが、意識はある。あの時のようだ。
「大丈夫ですか!?」
「ああ…。早かったな」
「人生で1番頑張って走りました」
「はは…。うっ…。」
「ひどい怪我…起き上がらないで」
「お前たちがいなければ…」
「瑠衣!?後ろだ!」
後方をはっと向くと、降谷さん同様ボロボロになったクリスチーヌが恐ろしい形相で近づいてくる。
拳銃を構える間もなく、手に持った鋭利な破片が眼前に迫っていた。
身体が何かに包まれたのと、身体が硬直し、ぎゅっと目を瞑ったのは同時だったと思う。
数秒経ったか、ゆっくりと目を開くとその場に崩れるように倒れ込むクリスチーヌ。その背後にはがっしりとした足元が見えた。徐々に視界を上げていくと。
「村中さん!」
彼がクリスチーヌを止めてくれたようだ。
わたしの身体に回された腕がそっと離れる。
「こんなことになったのは全部彼女の正体に気づかなかった、わたしの責任だ」
「…」
村中さんは表情を固くし、クリスチーヌを見下ろす。
結婚式の予行を見てたからわかる。この人はこの殺人鬼を心の底から愛していた。
彼女はなぜ、村中さんを選んだんだろう。警察関係者だったから?近づきやすかったから?それとも…。
今となってはそれはわからない。
村中さんがクリスチーヌを横抱きにする。
わたしも降谷さんに肩を貸しながら一緒に立ち上がる。
「わたしが目暮に引き渡す。そっちの彼は公安だろう?早くこの場を離れた方がいい」
降谷さんの目が見開かれる。
「なぜそれを…」
「経験でわかるんだよ」
「…君たちは幸せになれよ」
言葉はもう聞こえなかった。
「…」
「行きましょう降谷さん」
「ああ…」
「渋谷に仕掛けられた爆弾の方はコナンくんがなんとかしてくれる」
「彼は本当にすごいですね。みんなにとってのヒーローだ」
「でも、わたしにとってのヒーローは…」
じっと降谷さんを見つめる。
「僕はそんな柄じゃないさ」
「さっき守ってくれたじゃないですか。風見さんからも、降谷さんが夜も眠れないぐらいすっごく松田さんのこと心配してますって言われましたし!」
「…大袈裟だな。そんなことは言ってない」
「なんでとぼけるんですか!わたし嬉しかったんだから!これからずっと言いますからね!」
「はいはい」
リスのようにぷぅっと頬を膨らませる。
降谷さんはわたしがこういうことを言うとすぐに揶揄うのだ。
でもこの距離が嬉しい。触って、笑って話せる場所に帰ってきてくれたことが。
そしてきっともうすぐ全部終わるんだ。
「松田に頼まれたからね。君を頼むって」
「…」
「あの頃のこと忘れたことなんかなかった。でも今回の事件を通して、色んなことを思い出したよ。
僕が出来るのはあいつらからもらったものを、この先に繋いでいくことだけだ」
家に帰ってお兄ちゃんたちが写る写真立てを手に取る。
またいつか、みんなの話聞けたらいいな。
お兄ちゃん、萩さん、ヒロさん、伊達さん、わたしずっと彼と一緒にいたい。だからどうか、どうか無茶ばかりするゼロを守ってください。
- 18 -
*前次#
小説top
top