私は、諸事情あって全うな道筋から反れた人間である。
と云うのも親が連帯保証人なんぞになってしまったばっかりに、あれよあれよと云う間に家計が崩れに崩れていって。
最終的に一家心中と成った時に、なんか色々あって顔面と年齢的な意味で当時未だ前首領の担当医であった現首領のお眼鏡に叶い、私は7歳からポート・マフィアの医療班として生きているのである。

まあでも其れも、私が13になった其の日に「大きくなっちゃったから」と云う理由で、現在は尾崎様のお膝元に侍らせていただいてるんだけれど。
真実ほんとうに、和風の似合う高偏差値の顔面に生んでくれて有り難う今は亡き父母よ。
娘はなんとか今日を生き延びてます。

──却説。
こんな私が、この一歩違えば即お陀仏の物騒な組織で何故生き延びていられるのか。
それは私が、と或る力を有しているからである。

其れこそ、異能。
噂では人間的にどっか可笑しい思考回路だったり腹に一物抱えてる人間に発生すると云う、一寸普通ではない能力のことだ。

異能と云うものは、ピンからキリまで様々な種類のものがある。
自他の重力を支配下に置き、了いの果てには元気玉みたいななんか凄い玉を放つもの。
夜叉と云うとんでもなく殺傷能力の強い殺戮人形を顕現し操るもの。
檸檬を象った爆弾なら幾ら投げつけられても爆風にまみれても無傷でいられるもの。
異能力であるのなら、どんな力であったとしても触れた瞬間に凡て無かったことに出来てしまうもの。
とまぁ、そりゃもう個性豊かに様々だ。

そうして、そんな私の異能も、また個性の強いものでありまして。

異能力──百花譜ひゃっかふ
手のひらで触れた躯の状態を理解・分析し、見付けた異常をお治し、、、出来る能力である。

此のお治しというのが如何云うことかと云えば。
相手の躯に触れた瞬間に──なんかこう、脳内イメージで云えば相手の躯に根っ子が拡がっているのが見えるようになって。
其の絡まってたり痛んでたりする根っこを、解したりして強張ったりしてるものを解すことの出来る能力なのである。

詰まる処、もう如何しようもなく簡単に簡潔に云ってしまうと、半端なく気持ち善いマッサージをすることが出来る能力ということだ。
身も蓋もないのは判ってるけど、正直此れが自分自身一番判りやすい。

後は外傷でなく病気的な内傷り内部の傷であるのなら、まあ如何にかこうにか出来たりもする。
完全に、皮一枚向こうの治療、、、、、、、、、に特化した能力なのである。
なので、マジで外傷だとなにも治せない。

森様に気に入られて、そして能力が発覚してからは、延々と医療的な知識を詰め込まれていて。
そして最終的に西洋医学ではなく東洋医学の方が能力に適合マッチしていると判断され、今の"マッサージ"というスタイルで落ち着いた。

自分一人では此のスタイル処か、自分の能力さえきちんと把握出来なかったであろうから。
例え容姿的な意味で私を見初めて容姿が許容範囲外になったから棄てられた過去があるとはいえ、個人的には未だに森様のことは慕っている。
まぁ其れは12歳まで性的な意味で手を出されなかったからだけれど。
真実ほんとうに、鑑賞用、、、でよかったと思うばかりである。

此れはそんな、私のお話。