06
昼食を済ませてコートに向う途中、帽子をかぶった小柄な後姿を見つけて、すずは思わず呼び止めた。
「リョーマ!」
「なに」
「薫くんとの試合、今から?」
すずが隣に並ぶと、リョーマは小さく頷いて再び歩き始めた。
「薫くんの他の試合は見た?スネイクなんて強烈だし、スタミナはあるし強いよ」
返事が返ってこないリョーマとの会話に慣れてきたすずは、構わず話し続けた。あっという間にコートに着き、じゃあ頑張ってねと声をかけると、リョーマは少し立ち止まってぼそっと言った。
「...海堂先輩の応援、しなくていいの」
クラスメイトでしょ、とリョーマはちらりとすずに目線をよこし、そして逸らした。少し幼くも思えるリョーマの言動にすずは目を瞬かせると、小さく笑ってリョーマの背中をぽんぽんと叩いた。
「心配するな!両方応援するから!」
「...痛い」
恥ずかしくなったのか、リョーマは体をよじってすずの手から逃れてそそくさとコートに入っていった。そのコートの前の試合は桃城だったようで、観戦していたのだろう、フェンスのところには不二と菊丸の姿もあった。
「先輩方、お疲れ様です」
「あぁ、お疲れぃ」
「お疲れ様。越前の試合、観に来たの?」
「はい」
すると続々とレギュラー陣が集まってきて、桃城もコートから出てきてすずの隣に並んだ。
「よぉ、すず。お前スコア番は?」
「何処かの誰かさんとは違ってすごーーーく紳士で優しい大石先輩が代わってくださったの!」
「へぇ、そりゃよかったな」
どうにも嫌味が通じていない様子の桃城を軽く睨みつけていると1年生のざわめきが聞こえ、向こうから臨戦態勢の海堂が歩いてきた。
「いよいよ、越前とレギュラーか」
「あの海堂相手にどこまで食らい付いていくか、楽しみだな」
菊丸は純粋に興味津々といった様子で、乾は早速ノートを広げてデータを書き込む準備を整えていた。同じく観戦組の手塚と不二も、興味深そうに2人の選手を見つめていた。
ーーーザ・ベスト・オブ・1セットマッチ、越前サービスプレイ!
試合開始のコールがかかると、コートが独特の緊張感に包まれた。前傾姿勢で構える海堂と、ボールを握り締めるリョーマ。その場の全員が2人に注目する中、最初のサーブが放たれた。
20160927
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