手放した花びら

誰もがその少女の演技に魅了された。少女がステージに立った瞬間、その世界に引きずり込まれる。スポットライトは少女に当たり続け、多くの期待の眼差しは少女を捉え続けた。もちろん多くの妬心の眼差しも。

圧、圧、圧、ぺしゃっ。

そのうち、舞台上で放っていた光は消え、少女は潰れて消えた。涙など、とうの昔に枯れ果てていて、残ったのは胸にぽっかりと空いた穴だけだった。

そして数年が経ち、以前の面影が消えた少女は大人になった。今は廃れた劇団の掃除係として働いている。彼女はもう二度と舞台には立たないだろう。

全てを投げ出したのだから。
全てを捨てたのだから。
全てを失くしたのだから。




『"さよなら、私の愛おしい世界。"』





舞台から去っていく最後の瞬間まで、演技を続けた少女のその後のお話を共に紡いでいこうか。