打ち上げと明日
「えーそれでは、春組旗揚げ公演が無事、満員御礼で千秋楽を迎えられたことを祝いまして、打ち上げを開催したいと思います!」
「わー!お疲れ様でした!」
「おつかれー!」
「おつおつ。」
「…おつかれ。」
「おつかれダヨー!」
『お疲れ様です!』
「うっうっ、劇場が、なくならなくて、本当に、うっうっーー。」
「感動するの早いっすよ、支配人!」
春組旗揚げ公演も無事に終わり、ホッとしたような、でもどこか寂しいような感情が渦巻きながら団員達とお姉ちゃん、そして支配人と打ち上げを開催した。乾杯の音頭は座長の咲也君がやってくれた。咲也君の言葉に少し泣きそうになりながらも皆と乾杯を交わす。
「…ぷはー。」
『真澄君飲むの早いね…!?』
「うっうっ、まるで昔みたいな、うっうっーー。」
「支配人、泣きすぎですよ!」
「泣くといえば、至さんが泣いたのは意外でしたねー。」
「俺、もらい泣きしちゃいそうになりました!」
「足が痛くてさ。」
「え!?そっち!?」
「次からは怪我した時は言ってくださいね。」
『ごめん、お姉ちゃん…私、怪我のこと知ってたの。知ってた上で、皆に黙ってた。ごめんなさい。』
至さんの怪我に気付きながら私は至さんに舞台に立ってもらった。本来はしっかりと報告して、どうカバーしていくか皆と相談しなきゃいけなかったのにそれをしなかった。これは副監督でありながら黙ってた私の責任だ。
「それは違うネ〜〜!ワタシも知ってタヨ!だからごめんダヨ。」
「違うでしょ二人共。黙っててほしいって言ったのは俺。だから怒るのは俺にして。」
『何言ってるんですか!副監督でありながら報告を怠ったのは私です!責任は私にあります…!』
「ワタシが悪いネ!」
「いや俺だって。」
「あ〜〜〜〜!わかりました!今回はお咎め無しです!!でも今後は報告連絡相談!!いいですね!!」
「「『は、はい…。』」」
お姉ちゃんの勢いに至さん、シトロン君、私は肩を小さく縮こめ力のない返事をした。
「なんだかお母さんに叱られてる子どもみたいです!」
「あ、そういえば、次の公演はどうするんすか?」
「次は夏組の公演だね。」
『えーっと、一年以内にあと夏組、秋組、冬組の十五人を集めて、それぞれ一公演ずつやらないといけないから、春組の公演はまた来年になると思う。』
「じゃあ、しばらく舞台はお預けかー。」
「新作ゲームの耐久プレーが捗る…。」
「稽古は続けてもらいますからね!」
「マジか。」
旗揚げ公演を成功させた春組の皆にはサポートに回ってもらうことになる。サポートに回ることで色んな人の芝居を見て良い刺激になったらいいなぁ。
『夏組のオーディション…人来るかなぁ…。』
「スカウト枠もあるから、一応来てくれるとは思うんだけど…。」
「スカウト枠?」
「誰っすか?」
「明日のオーディションに呼んだから、見たらきっとわかると思うよ。」
「鉄朗さんか…。」
「まさかの…!?」
「まず、台詞が聞こえねえ!」
明日のオーディションに胸を膨らませながら、私達は打ち上げを楽しんだ。