まるで魔法のようで

*ヤムライハside*


王様が助けたのはとても美しい女の子。


「さぁ、まずは基本を叩き込むわよ!」

『はい!よろしくお願いします!』

サラサラと美しい髪が靡く。銀色に混じる薄紫色。人とは違う何かを感じた。かと言って、マギのようにルフの加護があるわけでもない。魔導士の素質がある普通の女の子。

「この本を読んで頭に叩き込むのよ。それから実践に入るわ。」

『はい!頑張ります!』

今だに信じられない。こんな普通の女の子が《異世界》から来たなんて。何のためにここに来たのか、彼女は帰ることが出来るのか、謎が多い。きっと何らかの魔法でここに連れてこられたんだと思うの。だったら私が解明するしかないわよね。

『ルフに命令する…?』

「そうよ、ルフに命令することによって、色々な現象を起こすことができるの。命令式が複雑であればあるほど強い魔法を使うことができるの。」

『す、すごい…。』

宝石のような目をキラキラさせながら、莉亜は勉強に励んだ。教える立場として、素直に嬉しかった。きっとこの子は素晴らしい魔導士になる、そんな気がしたの。

「さぁ、基礎を頭に叩き込んだところで実践よ!」

『が…頑張ります…!』

よしっ、と意気込む莉亜だが、なんだか私が緊張してきてしまった。でも最初は出来ないのが当たり前。

「まずはこの杖を持ってみて。」

『はいっ、』

震えた手で私の杖を持つ莉亜。私もゴクリと固唾を飲んで見守る。

「リラックスしてね。ルフを感じるのよ。」

莉亜はスゥ、と深呼吸をして杖を構えた。その瞬間彼女の魔力に何らかの変化を感じた。

『水魔玉っ!<シャラール・テサリア>』

彼女が呪文を唱えた瞬間、空中にポンポンっと数個の水の玉が形成された。それは上空に上り、一つにまとまって弾ける。

『…。』

「〜〜〜っ!!すごいわ莉亜!たった一回で出来てしまうなんて!」

『ヤムライハさんのおかげです!本当にありがとうございます!』

やっぱり私の目に狂いはなかった。本当に良い子だわ。こんな風に魔法を楽しそうに使う子を見たのは久しぶりだった。もっと教えたい。もっと彼女の魔法が見たい。

「あら、髪が乱れちゃったわね。ちょっとジッとしてて。」

『えへへ…なんかヤムライハさんお姉ちゃんみたいですね…。』

「お姉ちゃん…?」

『はいっ!私、兄弟はいなかったんですけど、きっと姉がいたらこんな感じなのかなって…。』

莉亜の寂しそうな表情を見て、やっと気付いた。そうだ、この子は不安と寂しさでいっぱいなんだ。今まで見せてた笑顔もこの子の強さなんだ。

「私も妹がいないから、きっと妹がいたらこんな感じなのね。あ、ねぇ!」

『は、はい。』

「私のこと、お姉ちゃんって呼んでみて!」

『そっそっそれは恐れ多いです…!』

「いいからいいから!」

『う…、えっと…ヤム…お姉ちゃん?』

恥ずかしそうにはにかむ彼女にキュンとした。妹に欲しい、そう思ったのだ。守ってあげたいと言うのはこういうことなんだろう。私は莉亜の頭を撫でる。

「ほんっっとに可愛い!もういっそのこと本当に私の妹になって!」

『ふふっ、ヤムライハさんの妹になれたらきっと毎日が楽しそうですね。』

「そう言ってくれると嬉しいわ!さ、魔法の練習の続きをやりましょう!」

『はいっ!』

まだまだここの世界では赤子同然の彼女に生きるための知恵を、力を与えることが私達の使命。でも、王様からの命令とかじゃなくて、個人として莉亜を守りたいと思うのは、私が莉亜のことをもう大好きだからなのね。ねぇ、莉亜。