月明かりに照らされて

月明かりに照らされた委員長の後ろ姿はどこか趣があった。沈黙が2人の間で流れ、歩く音だけがその場で響いた。

『いっ、委員長も聞いてたんですか?』

「まぁね。赤ん坊が通話状態にしてたから。携帯から聞いてたよ。」

『わ、たし、覚醒したらすごい力が手に入るんですって!あはは、すごくないですか!世界征服とかやっちゃったりして、』

「…、」

『どんな力なんですかねー!ビームとか出たらかっこいいですよね!それから、瞬間移動とか、あと、時間を止めたりとか…!』

「もういい。」

はっきりとした拒絶の言葉に思わず足を止めた。委員長はゆっくり振り返り、私を真っ直ぐに見る。

「君のそういうところ苛々するよ。」

『ひ、ひどいですよ委員長…っ、』

「笑わないで。」

『っ、』

「誤魔化そうとするのが腹立たしいんだよ。君は弱いのにどうして強いフリをするの。君が弱いのなんてとっくに知ってる。」

じゃあどうしたらいいの。戦うのは私じゃない。傷つくのは私じゃない。それなのに私が泣いて、どうにかなるの。どうにもならないじゃない。

「素直になりなよ。泣きたいなら泣けばいい。誰も君を咎めたりしない。」

やめて、お願い、ここまでグッと堪えてたのに。どうして貴方はいつも私の欲しい言葉をくれるんですか。

『委員長。』

「何。」

『こわい、です…。星空の娘とか、突然言われて、指輪争奪戦とか、私に関係ないし、敵も…っ、怖いしっ、』

「…、」

『どうして私なの…っ、力なんて、いらないっ、この目もっ、いら、ないっ…!わたしは、ただっ、普通に、暮らしたいだけっ、なのにっ…!!』

怖いことも嫌。痛いことも嫌。私は巻き込まれたくない。普通に暮らしたいだけなのに。私の意思は関係なく事が進んでいってしまう。抵抗して立ち止まっていたいのに無理矢理背中を押されていくような気持ちだ。みっともなく涙がボロボロと溢れ、コンクリートにあっけなく吸い込まれていく。

「関係ないよ。」

『え…?』

「君がなんだろうが、その目の色がどうであろうが、僕には関係ない。」

『…、』

「あの腕章を渡した日から君は僕のものなんだから。」

委員長の言葉が優しく心に響いていく。月明かりに照らされる彼はとても綺麗で、目を離す事ができない。彼は私に近付き、私の体を包み込んだ。人の温もりに触れたことで、さらに涙が止まらなくなる。

「君が誰であろうと、なんであろうと、誰にも渡さない。君は僕だけを見ていればいい。」

『い、いんちょ、ふっ、うぅ…っ、』

私は子どものように委員長の腕の中で泣いた。その間、委員長は私を優しく抱き締めていてくれた。


***


「泣いて寝るって…子どもみたい。赤ん坊、いるんでしょ。」

「わりぃな雲雀。急に呼んで。」

「別に、」

「花莉は今まで何も知らずに育ってきたんだ。急にお前はマフィア一家の生き残りだ、なんて言われたら不安にもなるだろ。…雲雀、」

「なんだい。」

「こいつを支えてやってくれねーか。花莉はお前を一番信頼しているように見える。」

「どうだろうね。まぁ君に言われなくてもこれは僕のものだし、渡さないよ。」

雲雀は花莉を横抱きにし、彼女の頭に唇を落とす。リボーンはそんな2人を背に、綱吉の元へと戻っていくのだった。