熱を孕んだ捕食者

※やや注意

「目をそらすな。これはボンゴレを継ぐ者の宿命。」

誰かが苦しんでいる。ああ、誰かが傷つくのが嫌で苦しんでいるんだ。私も同じだよ。誰かが傷つくくらいなら、こんな力いらない、こんな名前いらない。

「代価を払わずして力を手に入れることなど叶わぬ。」

「偉大なる力を欲しければ、偉大なる歴史を継承する覚悟が必要なのだ。」

違う、違うよ。誰かを傷つけてまで力を手に入れて何になるというの。人は間違ってばかりだ。欲望のために誰かを犠牲にして、幸せになるなんて間違ってる。だったら力なんていらない。

「こんな力なら俺はいらない!!こんな間違いを引き継がせるなら…俺が…、」

「俺が…ボンゴレをぶっ壊してやる!」


***


『っ!!!』

弾けるように目が覚めた。勢いよく起き上がり、額を手で拭う。思った以上に汗をかいていて、来ていた大きめのシャツも汗でびっしょりと濡れていた。

「今日はお寝坊さんなんだね。」

『!!…いつからそこに…、』

「少し前だよ。来たらまだ寝てたからさ。魘されてたけど大丈夫?」

白蘭さんは私が寝ている間にこの部屋に入ってきたらしい。ソファーで寛ぎながらマシュマロを食べている。

『大丈夫です……。』

あの夢はなんだったのだろうか。たぶん、綱吉君だったような気がするが、よくわからない。だけど、とても心強く、優しい何かを感じた。

「ねぇ、花莉ちゃん。」

『!!』

先程までマシュマロをソファーで食べていた彼は、いつのまにかベッドの上に乗っていた。なんだか、彼の目が怖くて、体にかけていたシーツをぎゅっと握る。

「そろそろいいかなぁって思うんだ。」

『な、何がですか…?』

「君はまだ幼いからもう少し待とうと思ったんだけどね。でも、君は思ったよりも大人だし、綺麗だから大丈夫だと思うんだ♪」

『だから、何が…っ、』

「君をもう僕のものにしちゃおうかと思って。」

目の前の彼は何を言ってるのだろうか。彼の言葉がぐるぐると頭の中で回り続けて、理解まで辿り着けない。いや、理解なんてできないことだ。彼は私にじりじりと近づき、私の肩をぽん、と押した。私は弾力のあるベッドに倒され、彼に見下ろされている。

「どうして驚いた顔をしてるの?わかってたことでしょ?まさか手を出さないとでも思ってた?」

『なん、で…、今なんですか……?』

「我慢、できなくなっちゃった。」

『っ、』

ぺろりと舌舐めずりする彼から逃げようとしたが、叶わなかった。彼は私を跨ぐように座り、自らの上着のチャックを下ろして脱いだ。黒い半袖のTシャツになった彼は私の両手を頭の上で固定し、私の服に手をかけた。

『や、やだ…っ!!やめてください!』

制止の声を聞こえないフリして、パジャマ代わりにしていた白いワイシャツのボタンをぷちぷちと外していく。寝ている間はブラジャーをつけていないため、私を守るものはキャミソールだけだった。

「ふふ、可愛い。やっと僕だけのものになる。」

『んぅ、………っ、』

「口開けて、花莉ちゃん。キスの仕方くらい知ってるでしょ?」

彼の問いに、私は口を頑なに閉じながら顔を横に振った。彼は楽しそうに笑い、鎖骨に顔を埋める。そしてその直後、鎖骨あたりにチクリとした痛みが走った。

「肌が白いからよく映えるね。」

そう言って、彼は私の首筋に舌を這わせた。ぞわり、と体が打ち震えたような気がした。嫌だ、好きでもない人に体を許すなんて嫌だ。誰か助けて、…委員長、

『委員長…っ、いいんちょ、んぅっ…んっ、ふ、…やっ、』

噛み付くように、唇を重ねられた。彼の舌が私の口内を遠慮なく踏み荒らしていく。私の唾液と彼の唾液が混ざり合って、水音がその部屋で鳴り響いた。嫌で嫌で仕方がないのに、顎を掴まれて顔をそらすこともできない。

『…んん、ぅ、…!!』

「っ、」

『!!んんっ…!!』

私の口内を暴れまわる舌をそこそこの力で噛んだのに、彼は引っ込めるどころか先程よりも深い口付けをしてきた。彼の舌から出てるであろう血が、唾液と混ざって不快だ。

『ぷはっ……けほっ、けほっ…、』

「酷いなぁ花莉ちゃん。他の男を呼ぶ上に舌を噛むなんて。」

『も、もうやめてください…っ、』

「だーめ。大丈夫だよ、ちゃんと気持ち良くしてあげるから。」

まるで獣のようなその目は、確実に捕食をすべく、獲物を捕らえているようだった。ギラギラと欲に溺れたその獣は、笑みを深めるばかりだ。

「たっぷり犯してあげるね。」

その言葉は、私の熱を奪うにはあまりにも効果的で、何より恐ろしい言葉だった。