一番近くて遠い星

 ある日タウニーがMZ団の新メンバーとして連れてきたのは自分たちと変わらないくらいの年齢の少女だった。
 何でも最近シンオウ地方からミアレシティに引っ越してきたばかりなのだとか。オレもミアレには観光目的で来たところをタウニーに声をかけられて今に至るし、デウロは確かホウエン地方の出身だ。ピュールはミアレの人だと聞いているけれどタウニー自身もまた別の地方からやってきたというからMZ団では余所者はそう珍しいことじゃない。
 新メンバー……ナマエは以前ミアレで迷っていたところをタウニーに助けられたという。その後色々とあってMZ団に加入することになったようだ。
 リーダーであるタウニーがクエーサー社のほうへ行ってしまってから活動は縮小気味だった。今は暴走メガシンカのような街の危機もないし、時折ワイルドゾーンから出てしまった野生ポケモンを追い返したり捕まえたりといったことはしているが一時期と比べると穏やかなものではある。



「やっぱりキョウヤくんには敵わないなぁ」

 瀕死になったロズレイドをボールへと戻してナマエは苦笑する。
 ポケモン勝負があまり得意ではないから修行に付き合ってほしい、と言われて彼女と勝負するようになって一週間。彼女の実力を見てこちらの使用ポケモンを調整しているけれど今のところ全勝だった。
 ——ZAロワイヤルでランクAになったオレは客観的に見ても強いらしい、というのは理解している。強くなりたいとは思っていたがその為に血の滲むような努力をしたかと言われるとそうではないし、ただ戦うことを楽しんでいたらいつの間にか誰よりも強くなっていただけだ。

「ナマエのロズレイドもよく育てられている。ひとつでも判断をミスしたらオレも少し危なかったんじゃないかな」
「キョウヤくんにもミスとかあるんだ。全然そんな感じしないけど」
「そりゃあオレだって常に的確な指示を出せるわけじゃないよ。状態異常にすべきだったタイミングで大技を指示して隙が出来てピンチ、とか割とよくあるし……」
「わたしは今のタイミングでこの技を指示したのが正しい判断だったのかもよく分からないから、そういうの分かるだけでも尊敬する。流石に自分の指示が直接的な敗因に繋がっていたら分かるんだけどね、タイプ相性を間違えたとか」

 ミアレシティにやってくるまでポケモンすら持っていなかったのだ。家族や友人がポケモンの話をしているのを聞いて自分もいつかはトレーナーに、と憧れを抱いていたけれど駅の改札を出てすぐにタウニーに声をかけられていなければオレは今もトレーナーではなかったかもしれない。
 まさかミアレを救った救世主のような立場になってしまうとは思わなかったし初めてポケモンを手にしてからほんの数ヶ月でそういう立場になってしまったから正直まだ新人トレーナーという感覚が抜けきってはいない。
 デウロやピュールにそんな話をすれば「自分より強いのに謙遜するな」なんて言われそうだしタウニーにも「キョウヤが新人トレーナーならミアレには新人だらけだし」とでも言われるような気がする。

「キョウヤくんはミアレを救ったすごい人。こっちに引っ越してきたばかりのわたしでも知ってる有名人」
「あはは……自分ではそんなすごいトレーナーだとは思ってないけど……」
「いつかわたしも、キョウヤくんのとなりに立てるくらい強くなりたい。タウニーちゃんやデウロちゃん、ピュールくんみたいに一緒に困難に立ち向かえるようになりたい」

 ナマエはもう十分、共に困難に立ち向かえる仲間だと思っている。まだトレーナーとしては未熟なところもあるけれどその成長には目を見張るものがあるし、そのうち追い抜かれてしまうのではという不安もある。
 とはいえ、彼女の成長ぶりを一番近くで見られる今の立場をオレは気に入っている。少なくとも暫くはこの地位を他の誰かに明け渡すつもりもないし彼女に追いつかれないように強さを求め続けるつもりだ。