ロマンチックの作り方

*BW2の数年後設定


「結婚しませんか」

 他愛ない会話の最中、突然そんなことを口にしたコーンに私は危うく飲んでいた紅茶を吹き出しそうになってしまった。
 確かに私たちは付き合っているし、付き合い始めてから三年になる。そろそろ一緒になることを考えてもいいのかなぁ、なんて思ったことも一度や二度ではない。
 だけどまさか何でもない日にしれっとそんな言葉を告げられるとは思っていなかった。デートをしているわけでもなく、ムードのいい場所で愛を語らっていたわけでもない。
 ——尤も私はロマンティックなプロポーズに強い憧れがあったわけでもないけれど。

「……そんなこと、急に言われてもびっくりしちゃう」
「でもずっと考えていたことですよ。ナマエの気持ちが最優先ですが」

 私の気持ち。嬉しい。心の底から嬉しいと思っている。それは紛れもない事実だ。
 そもそも好きでもない人と付き合ったりはしない。もちろん付き合っていても結婚は考えていないという人もいるのだろうとは思うのだけど少なくとも私自身は好きになった人と結婚して幸せな家庭を築いていきたいと思っている。
 だから彼への返事は最初から決まっている。ただどうしても——。

「…………私でいいの?」

 コーンが他の誰かではなく私を選んでくれることがまるで夢のようで、もしかしたら自分に都合のいい夢を見ているだけなのではないか。目を覚ましたら何もかもが消えてなくなってしまうのではないだろうか。

「ナマエはこのコーンが適当な女性に気紛れにプロポーズするような男だと思ってるんですか?」
「そんなことはないけど……現実とは思えなくて。だけど失礼なこと言っちゃったね、ごめん」
「別に怒ってはいませんよ」

 何とか平静を装っているけれど私の心臓は今も大きな音を立てている。気を抜くと声が震えてしまいそうだ。恐らく今の自分は耳の先まで赤くなっていることだろう。
 一方のコーンはみずタイプのように涼しげな表情で(実際にみずタイプの使い手ではあるのだけど)それが何だか少しだけ悔しい。

「実を言うとデントやポッドに結婚は考えてないのかって言われることが増えたんですよね。二人に急かされたから結婚したいというわけではありませんしお互いにタイミングもあるでしょうけど」
「……私はコーンと一緒に幸せになりたい。他の誰かとなんて嫌だなってプロポーズされたことで改めて思ったから」

 だからこんな私でよければよろしくお願いします、と。なんてことのない日のプロポーズに、何でもないようにそう返した。

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