03

まずいまずいまずいまずいまずい。
まずい事になった。非常にまずい。
四日って、四日って!
……探してる、探してるよね?
絶対探してるよね?!
無表情の裏に鬼を背負って探してるよねえ?!

「まずい、絶対、確実、怒られる、迷子になったなんて……それは災難だったな名前、とは絶対ならないイイイ!」

「ちょ、なに、どうしたのよ」

「か、帰らなきゃ……」

顔を青ざめてぶつぶつと呟いている私を、明らかに引いているという目で見ながら呆然と立ち尽くす木の葉の二人を無視して、どうしたら我愛羅に怒られないようにするかをひたすら考える。

今すぐ帰って……でも砂の国まで私の足だと、二週間くらい?
と、遠い……忍者なら早くて三日くらいって聞いたけど……どうすれば、

「あ、そ、そうだ!こっそり帰って、隠れんぼしてましたあ!ってことにすれば……」

「その必要はない」

よしその作戦で行こう、頑張って里まで帰って、何食わぬ顔で家まで帰ろう。よしそうしようと作戦を決定した瞬間、ガラ、と病室の扉が開き、今一番聞きたくない声が聞こえて、ヒッ!という声と共に心臓が跳ねた。

「が!が、あら……あ、いや、風影様!な、なんでここに」

「……お前が、日が暮れても帰って来ないからだ。すぐ捜索へ向かった。俺自らな。里の近くにある森の中で任務中らしき木の葉の忍からお前の事を聞いた」

「うえ……!そ、そ、そうですか!それはそれは!」


お、お、怒っていらっしゃるゥウウウウ!
無表情で冷静そうだけど、私には分かる……!
よく喋るし、これは、相当怒ってる!

こちらを見つめたまま、淡々と言う我愛羅から目を逸らす事も叶わず、痛む背中をビタッ、と壁に穴が開くんじゃないかという程くっつけ逃げ出したいと身体で表現。
このまま壁に穴を開けて隣の病室まで逃げてしまいたかった。

「我愛羅君、あ、いや風影様、どうしてこの子を?」

「我愛羅でいい。今日は風影として木の葉に出向いた訳ではない。こいつを、名前を迎えに来ただけだ。火影殿、砂の里の者が木の葉に迷惑を……すまない」

「あ、名前ちゃんていうのね、この子。いーよいーよ」

「せんぱ……火影様、風影様、お話のところすみませんが、僕はこの辺で失礼します」

我愛羅が木の葉の人と喋っているのを、いつこちらに火の粉が飛んでくるかとビクビクしながら壁に引っ付いて見ていると、
少しの間蚊帳の外みたいだった木の葉の一人が失礼しますと言って部屋を出て行った。

ていうか、ここに残ったもう一人の木の葉の人……鼻の上まで布で覆ってて変な人だと思ったけど、さっき火影って言われてなかった?
火影って偉い人だよね?木の葉の里の長だよね?
忍者って布で顔覆うのが普通なの?え、でもでも私のほっぺた摘んで引っ張ってた人が木の葉の長?え、なんか分かんないけど、なんかやばくない?
里の長って我愛羅しか見た事ないからみんな我愛羅みたいな人かと思ってたよ。なんかやばくない?

「名前」

「……は!はいィイイ!なんでござるか!」

「ござるって、君ねえ……」

火影と呼ばれた人に対して失礼な事を思っていると、我愛羅に突然名前を呼ばれ思わず変な返事をしてしまう。
いやデフォルトでゴザルとか言わないからね?びっくりしたから突然ゴザルって言っちゃっただけだから!
ああ、そんな可哀想な子を見る目で見ないで火影さまああ!

「火影殿に、礼は言ったのか」

「はっ、え、いや、まだ……」

私起きたばっかりなんだけど、状況も飲み込めてないんだけど、頬抓られて起こされたばっかりなんだけどおおおと思ったのは内緒にしといて、
助けてくれたであろう火影様に向き直り礼を言いえば「いいんだよ」と言ってくれる。

「んじゃ、まあ名前ちゃんも元気みたいだし、我愛羅君も来てくれたんだ、帰ってもらってもいいよ」

「ああ、すまない。その前に、名前」

「っは、はい……」

帰ってもらっていいと言われ、火影様の穏やかな笑顔も手伝ってこのままただ砂へ帰れるとこっそり安堵したけど、突然の我愛羅から二度目の指名。
私に向けられる顔は無表情だったけど、オーラが確実に怒りのオーラで、視線が泳いでしまう。
……やっぱり何か言わないと気が済まないって顔してる。
怒ってる……怒ってるよ……。

私の名前を呼んで、その後黙ったままこちらへ近づいてくる我愛羅を見て、謝らなきゃ!と口を開きかけた。途端、目の前が何かに覆われた。

「え……、え?」

「お前は……どれほど心配したと思っている」

「……あらぁ、君達そーゆう関係ってコトォ」

頭上から怒声を浴びせられる覚悟をし謝ろうとした私は、今、我愛羅に抱きしめられている。
心底心配した、と言う我愛羅の声は今にも崩れてしまいそうな程弱いもので。
ごめんなさい、と呟くと、無事で良かったと安堵の声に変わった。

「来てくれて、ありがとう……」

「ああ」

「……あの〜、」

身体を離し、微笑みながら見つめ合い2人の世界に入っている私たちの横から、とてつもなく申し訳無さそうに火影様が言葉を掛けてくる。
その時初めて、抱きしめられ、二人の世界に浸っていたのをこの人に見られていたと感じ焦りまくった。私だけ。

あっっぶね〜〜もうちょっとでキスとかしてしまう雰囲気だった〜、我愛羅の微笑みは最強だからな〜〜、
我愛羅は全然焦ってないけど、見られたのに恥ずかしいとか無いのかな。あ、え、もしかして見られてるほうが良いとか?!うーーーわ、そっちの方が寧ろ、的な?!

「……っと、ちょっと、おーい」

「は!はい?!」

「君、考え事してると周りが見えなくなっちゃうタイプ?もう我愛羅君と帰っていいから。医師には俺から言っとくよ」

序盤微かに悪口みたいに聞こえたが、それは聞こえなかったことにして感謝を伝えると、また遊びにおいで。と言い残して部屋を出て行った。
それを聞いて我愛羅は扉の前まで行き、出て行った火影様に会釈をし、再度、こちらへ振り向いた。
さっきまでの微笑みは幻だったみたいに、今はいつもの無表情だ。
天使の微笑みは一瞬かあ、と心で嘆く。

「帰ろう。テマリやカンクロウも心配している」

「我愛羅も?」

「さっき言っただろう、」

「もっかい!もっかい言って!」

心配したと言って、その後天使スマイルをもう一度見せてくれ!と瞳キラキラ攻撃を寄越すけど、我愛羅は効果があるのかないのか分からない表情をしていて。
だけど少し困ったような表情になったかと思えば私の頬へ片手を伸ばし触れてきた。


「っ」

「心配をかけるな、お前を愛している分、居ないと分かった時どれほど不安になったか。もう居なくなるな、ずっと側にいてくれ……里へ帰ろう」

「……へ、」

お前を、おま、おまえ、を、あ、あああ愛して、愛して……心配して、不安……あ、愛して……




「の、ノックアウトだちくしょーー!サービスが旺盛過ぎだこのやろーーー!」






その頃の火影様(カカシ)

病室の前でこっそり会話を聞いていた。
「我愛羅君も、隅に置けないねえ、どーも」


おわり
(我愛羅君に心配される名前様でした)