とりあい 01
ウガアァァァァァァァ
「ん?なんだ?」
これはあの大きいトラの声かな、あんなに叫んでどうしたんだ。
散歩がてら、ここ第44演習場に内緒で入って見たけどさっきから大蛇やら大きい虫やら面白い生き物が沢山いて面白いとウロウロしていた。
今しがた聞こえたあの叫び声はついさっき会った大きなトラ君だろう。
また喧嘩でもして、あんな大きい声あげてるのかな。
「ちょっと行ってみよ」
向こうの方から聞こえたっけなあ、なんて特に危機感もなくのんびり歩いて声の聞こえた方に行ってみる。
私はなぜか動物に妙に好かれる体質らしく、動物の言っている事もなんとなくだけど理解できる。
私のご先祖様達も、動物の力を借りて戦う忍一族として木の葉の里じゃ知らない人はいないらしい。
けどその一族は皆死んじゃって、生き残りは私一人。一族の生き残りが一人なんて、あのうちは一族と同じだなあ。よく知らないけど。
お父さんお母さん含むご先祖様たちは皆忍だったけど、私はなんとなく忍にはならず里の外れでひっそり暮らしている。
収入源は家の近くで取れた薬草をたまに売ったり。あとは自給自足だ。
私が死んだら一族は絶滅してしまう事になるけど、一族の復興どうのこうのなんて私には関係ない。動物たちと、のほほんと暮らしているだけで良いんだ。
「おーい、トラ君〜、どこかな〜、……え!」
本当に探す気あるのかと言うような間延びした声を出しながらウロウロとトラ君を探して深い森を歩いていると黄色と茶色の大きな図体が見え、いた!と思ったのも束の間。
その大きなトラ君の体を茶色い物が覆い始めた。
あれは、砂?
「なになにどしたの!」
ガサガサと草の根をかき分けてトラ君の元まで走ってくると、なんと人が居た。
え、あれ、この森って立ち入り禁止区域じゃなかったっけ?なんでこんなとこに人が、
「なんだお前は、」
「……え、いやあなた達こそ、なに?」
突然なんだとか言われて、思わず聞き返してしまった。
よく見ると額当てをして居て、でも木の葉のマークじゃない、あれは砂隠れの…
忍者がこんなところで何やってんの、しかも他里となると、なんかやばいんじゃない…?
ジッとお互い立ち尽くして無言のままでいると向こうから声をかけられて、ハッとなった。
「お前、一般人か?なんでこんなとこにいんだよ、今中忍試験中じゃん」
「…!ちゅ、中忍試験?!まじ?!それまじなの?!」
それめちゃくちゃやばいじゃん!そういえば最近里がワイワイしてる気がしたのは中忍試験があるからか!
うわああああ、普段立ち入り禁止の区域に勝手に入った事がバレただけでも叱られる事必至なのに、中忍試験場に侵入したとかってなると余計怒られる…!
って、!そんな事よりトラ君を離してあげてよね!
「あ、あの!そのトラ君、苦しいらしいんで離してあげてもらっても、?」
「…黙れ」
「が、我愛羅、もうやめないか?」
「煩い…!」
どうやら砂を操っているのは赤い髪の口が悪い子らしく、その後ろに居た唯一の女の子が止めようとしても聞く気はないらしく、あろう事か砂で掴んでいたトラ君をそのままぶん投げた。
ガウウウ、!と声をあげながら近くの大木に叩きつけられたトラ君の元に走り寄ると、大きな怪我はしてないから大丈夫と私に言ってくれた。
それでも容赦なく動物をいじめた赤い髪に苛立ち、のそのそと森の奥に消えていくトラ君を見送った後、再度赤い髪の目の前までズンズンと歩いて行った。
「君!ダメだよ!動物いじめちゃ!」
「…消えろ、でなければ殺す」
「…!こんの〜〜っ!とりゃっ!」
「、っ」
口の利き方に気をつけな!と心で思いながら目の前の、愛と描かれたおでこに思いっきりデコピンを食らわしてやった。
赤毛くんの後ろにいた二人がこの世の終わりでも見たような表情で驚いていたので、ついでにその二人にも、君たちもだよ!と言ってやった。
「この女、我愛羅にデコピンしやがったじゃん…!」
「が、我愛羅、大丈夫…か?」
おいおいデコピンされたくらいで心配しすぎでしょ、君たち忍者なんだよね?
デコピンした瞬間すかさず私と赤毛くんの方まで駆け寄り、もう行こうなどと完全に私を無視した会話をしている。
…ま、いいけどさ。とりあえず私がここにいた事だけは黙っといてくれ頼むからと言い残し私は森を出ようと振り返った。