里長と私 01
毎日毎日、砂漠の土地はなんでこんなに日中暑いんだ。
朝からジリジリと日差しが照りつけて、たまに乾いた砂嵐が来て、夜はちょっと冷え込む。
たまに他里から来た観光客みたいな人たちは、涼しい格好で出かけて夜の冷え込みにやられている。
そんな砂漠地帯、砂隠れの里に私は住んでる。
「あっつうううううう」
いつもの様に朝起きて、出かける準備。
家の玄関を開けるとすぐさま舞い込んでくる熱気に家の中へ引き戻したくなるが、残念ながらこれから仕事だ。
私の職場は家からさほど遠くない。まあもともとそこまで大きな里じゃないし、里の端から端まで歩いて行ける距離なんだけど。
出勤時間は歩いて10分くらいか、なんてもう何回も通勤しているのに再確認するみたいに考える。
里の中にはところどころに展望台?みたいなのがあって、忍者の人たちがそこで里の安全を一日中監視してくれている。
毎日暑いのに、あんな暑そうな装束でご苦労様ですねと心の中で伝えた。
この人たちを初めて見たときに、忍者にならなくて心底良かったと思った私は不謹慎だろうか。
私の職場は涼しいんだ。どうだ羨ましいだろう、と今日も里を監視している忍者を見上げながら思った。
「おはようございます」
「あ、名前ちゃんおはよう。今日も暑いね」
暑い10分の道のりを歩き、職場までたどり着く。ほぼ毎日入り口にいる、門番をしている忍者の人に鞄から出した身分証明証の様なものを見せながら声をかけ、短い世間話をした後、涼しいであろう職場の扉を開け中に入った。
忍者の門番がいる職場なんて、多分この里には一つしかない。
私は里の中枢、風影邸で働いている。
まあ、風影邸で働いてるって言っても、ただの清掃員みたいなものなんだけどね。
なんか仕事ないかなあと思って探し回ってる時に、清掃員求ム!と書かれた張り紙を見つけて、一緒に書かれていた住所に行ってみると風影邸だっただけで。
でも初めて入る風影邸に最初は心臓が爆発しそうだった。
だって一般人が容易に入れる場所じゃないし、私自身、忍者の人と自体、ほとんど関わりがなかったから。
何しに来たんだ一般ピーポーの分際でェ!とか言われるのかとヒヤヒヤしながら行ったもんだ。
でも全然、思って感じとは違ってみんな結構優しかった。掃除してくれる人が来てくれて助かるよとか困ったらなんでも言ってねとか私より腰低いんじゃね?みたいな人たちばっかりだった。
それから、私は即日採用。次の日から働く事になって既に一年が経つ。
「お!今日もご苦労さん!」
「名前ちゃんが掃除してくれるおかげでいつも助かってるよ」
「はい、皆さんも任務ご苦労様です」
一度私に充てがわれた事務室に行き荷物を置いてから掃除道具を持ち早速掃除に取り掛かろうと事務室を出ると、いつもの様に何人かの忍者の人とすれ違った。
この風影邸で清掃員として働く一般人は私一人だけで、珍しいのかみんなよく話しかけてくれる。
「そういえば名前ちゃん、今日は夕方まで風影様が出かけてるからそれまでに執務室の掃除しといてくれってカンクロウさんが言ってたぜ」
「あ、そうなんですか。わかりました、夕方までですね」
私にはこの清掃の仕事を初めてから、今となっては一番の楽しみと言っていい事がある。
ここで勤務する様になってから数日経ったある日、私は初めて風影様に声をかけられた。
正直近くで顔を見たことなんてなかったし、喋るなんて以ての外。一生関わる事の無い、雲の上の人だと思っていた。
けど、かけられたんだ、声を。
最初私を見つけた時の風影様は完全に何者だと言う様な表情でこちらを見て来たけど、事情を話したら疑いの眼差しは消え、最近邸内が綺麗になっていたのはお前のお陰なんだな、ありがとう。と柔らかく笑って言ってくれた時、私は完全にノックアウトしたんだ。
人の笑顔にあれほどの破壊力があるとは知らなかった。
それからは時折見かける風影様の姿に一喜一憂して、身分不相応だとは分かってるけど、また話ができたらいいな、なんて私は完全に恋する乙女と化していた。
「今日は夕方までいないのかあ」
まあ風影様が邸内にいたとしてもほとんど執務室に籠りっぱなしで、会える事なんて滅多にないんだけど。
風影様が執務室で公務をしてるときは執務室内に私は入れないし。
とりあえず先に執務室掃除しとくかあ、と廊下を歩いていると、反対側からくノ一だろう、キャッキャと話しながら近づいてくるので、意識せずに会話が耳に入って来た。
「風影様って上役から押されて最近お見合い行ったらしいよお」
「え〜!それほんと?!やっぱ風影っていう身分だと結婚するのは大名の娘とかなんだろうなあ」
「だよねえ、私たちみたいなタダの忍じゃあ相手にもされないって事かあ、」
入って来た会話を、聞かなきゃよかったと思ったけどもう手遅れ。
見合いしてたっていうのもびっくりだけど、今私が気にしている身分の違いってのをまざまざと聞かされた気がして、たどり着いた執務室に入って扉を後ろ手に閉めた後、しゃがみ込んでイジけた。
そうかあ、やっぱりそうだよなあ…身分が違いすぎるもんなあ。
くノ一に嫉妬する訳じゃないけど、あなた達みたいなタダの忍が相手にされないってんなら、忍者でもない一般人の私は一体どこまで相手にされないんだ。教えてくれ。
身分があるからと、想いを閉じ込めないといけないなんて、身分というこの世の制度を今すぐグシャグシャにしてゴミ箱にポイしてやりたい。
「…もし大名様の娘だったら、私にもチャンスがあったのかな」
「誰が大名の娘なんだ、?」
……………
「え?!!!」