03
「え?…それって、どういう」
「そのままの意味だ。…風影としてでは無く、一人の男として聞いている」
棚にもたれて、腕を組んで、まっすぐ前を見ながらさっきまで話していたけど、今度はゆっくりこちらに向き直り私に聞いてくる風影様の表情が真剣すぎて、やっと落ち着いたと思った心臓がまた跳ねた。
何を聞いてんだなんて思いながらも顔に熱が集中して来た感じがして思わず下を向いた。
「だ、あ、えっと…、ひ、一人の男として、ですか」
「そうだ、」
い、いや、そんな事聞かれても。どういう意図で聞いてるのか分からない。
なんで私にそんなこと聞くんだ、というか私になんて言って欲しいんだ。風影様。
一人の男としてどう?なんて今まで聞かれた事ないし、漫画とか小説とかの話の様ならこのまま私は好きだよと答えて、そして二人はフォーリンラブ。
……………いやいやいやいや、ないないないない。
だっておかしいでしょ、そういう話なら風影様は私の事ス、…いや、何を考えてんだ私は。そんな事ある訳ない、絶対ない。
ぐるぐるぐるぐる、と考えがまとまらなくて下を向いたまま、えっと、とか、あの、とか、小さく呟くしかできないでいた。
「…名前、?」
「!、…あ、えと、えー、っと…わ、わかりませ、ん」
「そうか、では質問を変える」
ま、まだあるのか。もうそろそろ変な動悸で倒れそうだ。
こんな風影様のお遊びみたいな質問責めを受けるなら邪魔だから掃除が終わるまで出て行っててくださいって、言っとけば良かったよ。
相変わらず風影様はこっちを見てるんだろう。
うう、絶対顔赤いのにそんなに見ないでくれ頼むからあああ
「な、なんですか…」
「俺が、お前を嫁に貰いたいと言ったら…お前は嫌か」
へ?
「か、風影、様?…え、今…なんて」
「嫁に貰いたいと言った」
「あ、え、よ、よめ…?何言って」
じ、冗談だよね、
ていうか接点なさすぎて好きになる要素なんか無かったでしょ。
って、それは私にも言える事か。風影様と喋ったのなんてこれが二回目だし。
相変わらず風影様の方は見れなくて、俯いたままでいると、こっちを向いてくれと言われたけど、無理だと言うように首を振った。
「や、あの、ていうか、冗談…やめてくださ、…」
冗談じゃなかったらなかったで、嬉しいけど、冗談にしか思えないし、それなら早くやめてほしい。
風影様は人をからかったりするような人じゃないと思いたいけど、急に嫁に貰いたいなんてそんな事言われて、はいそうですかなんてすぐ思える訳ないし。
もたれていた本棚から離れ、黙ったまま俯いている私の前に来た風影様の足元を見ていると、片方の肩に手を置かれ思わず上を向いてしまった。
「…!風影、様」
「俺は冗談で言っているのではない。お前と初めてあった時、一瞬しか話をしなかったが…お前の事をもっと知りたいと思い、気づけばお前の事ばかり考えていた」
「…、で、でもそれで嫁に、なんて」
「…そうだな、突飛が過ぎるかもしれない、…だが俺は本気だ。」
本気、と言った風影様の瞳は、ほんとに凄く真剣そうで、圧倒されてしまって目が離せない。
こ、これはマジのマジで求婚されてるって、そう言う事…?いや、でも、
「で、でも私、大名様の娘でもなければ忍でもないしただの一般人だし…、風影様はもっと優秀な方と結婚して、あの、跡継ぎを育てるのが普通だと思うんです、けど」
そうだ、何回も言うが私はただの一般人。風影様の事は好きなんだけど、結ばれる訳には…上役の人達だって許す訳はずない訳で、
風影様が、風影様じゃなかったらなんて、この一年何回も思ったんだ。
「あ、わ、私、一年前に声かけて貰った時から風影様の事ばかり考えちゃって、気づいたら、す、好きになっちゃってましたけど、…やっぱり身分が違いすぎます、」
言っちゃった、好きって言っちゃった。
…でも自分で言っといてアレだけど、身分が違うって、やっぱりヘコむ。
自分で言った事に自分で落ち込んでしまって、風影様を見ていた目が再び地に落ちたところで、風影様は私の肩に置いていた手を一瞬退き、今度は両手を私の顔の横についた。
…か、壁ドンというやつかコレは…!
「…なら聞くが、お前は俺に嫁に来てほしいと言われて、どういう気持ちだ」
「…っ、ど、どうって、」
そんな事より顔が近いんですけど…!
どういう気持ちかなんて、嬉しいに決まってるけどその反面、私なんてダメだって、…そう思う。
「え、と、あの、嬉しい…ですけど、でもやっぱり、…」
「身分など関係ない。俺は風影という立場はあるが、一人の男だ。風影としてお前に想いを伝えている訳ではなく、一人の男としてお前に、嫁に来て欲しいと、そう言っている。分かるか」
「わ、分かります、けど」
私がウジウジとしているからか、なんなのか、風影様はなんとなくだけど表情に威圧感が出てきて、ちょっと怒ってる気がした。
私の顔の横にある風影様の両腕が、グ、と少し力が入っているのを感じて、今更だけど風影様も立場を無視してまで、身分もなにも関係なく私なんかの事好きって言ってくれてるんだって事に気付いて、私自身も身体に力が入った。
「…改めて言う。俺についてきてくれないか。身分など関係ない。お前の事をもっと教えてくれ。私なんか、など、そんな事言うな」
「…、っ、」
風影様にそう言われて言葉が詰まった。
私、風影様が好きなんて思っときながらただ身分の違いに逃げてただけかもしれない。
上役の人になにか言われるとか、私なんかどうせただの一般人だし、風影様は雲の上の人だからって、憧れだけで終わらそうとしてたのかも。
それでもここまで言ってくれる風影様になら、ついていっても、良いのかな
「私なん、…私で本当に良いんですか、」
「当たり前だ。だからこうして言っている」
表情にはまだ少しだけ威圧感があるけど、ハッキリと私に想いを伝える風影様は、一年前に見た時より凄く輝いてて、また心臓が早くなった。
ああ、私、やっぱり風影様の事すごい好きだ。
好きなんて気持ちに身分なんてそんなもの関係って、それを風影様は教えてくれてるんだ。
「…っ、風影様、」
「なんだ」
ウジウジせずに風影様の目を見て、多分顔は赤いだろうけど、心臓も凄く煩いけど、風影様だって想いを伝えるのは凄い踏ん張りが必要だったはずだから、私も自分の気持ちを言わなきゃ。
「私、風影様のこと、す、好きです」
勇気を出してもう一度。
風影様は一瞬目を見開いて、その後柔らかくフワリと笑った後、
俺もだ、
そう言って私を抱きしめた。
身分なんて関係ない、好きならそれで良いじゃない。
ちょっと強引なところもあったけど、必死で想いを伝えてきてくれて、抱きしめてくれた風影様の心臓は、私のそれと同じくらい煩かった。
おわり
音羽様からのリクエストでした!
風影様がちょっと強引になっちゃいましたが無事両思いです…!
リクエストありがとうございました〜!