家族が増えた日 01
※長編「今日も今日とて」の番外編です。
「お前……!ついにかよ!やったじゃん?!」
「うっさい!声がでかい!」
我愛羅君と祝言をあげてから一ヶ月くらいだろうか。
私はフと、毎月のアレが来ていない事に気付いた。
正直、我愛羅君と行為に及んだのは祝言をあげる前の、あの一回きりで、それ以降は何やら色々忙しくて、というか我愛羅君が忙しそうで一緒に寝ることも殆どなかった。
小鳥キッス的な、そういうのはよくしてたけど…
でも最後まで、なんてのはもう全くしてなくて。
まさかなあ、なんて頭の片隅にある位だったのに、一応と思って病院に行ってみたらそのまさかだった。
「で、我愛羅には言ったのか」
「……いや、それが、まだなんだよね」
「は?」
いつぞやの、オムライスが美味しい喫茶店で、そしてまさに今そのオムライスを口に運ぼうとしているカンクロウ君の手が止まる。
「なんで言わねえんだよ」と口にしながらこちらを見てくるけど、私は「だって」とか「うーん」としか出てこない。
「だって、なんなんだよ。普通直ぐにでも言うもんじゃん、そういう事はよ」
「うーん、だってさ、なんか……踏ん切りがつかなくてさ。言おう言おうとは思ってるんだけど……いざってなると言えなくて」
「……」
そう、言おう言おうと思えば思うほど、悪い方へ色々考えてしまってなかなか言えない。
なんでかって、我愛羅君とは「子供欲しいね」なんて会話を一切した事が無いからだ。
というかそもそもシンキ君が既にいる訳で。
我愛羅君がもう一人望んでいるのかが分からなくて、もしかしたら、いらないとか思っていて、だから私と子供の話をしていないんじゃないかとか考えてしまっている。
迷惑とか、そんな風に思われたらどうしようなんて、我愛羅君に限ってそんな事ないと考えても思考は悪い方へ悪い方へといってしまった結果、懐妊を言えずにいる。
そして今、兄であるカンクロウ君を「あそこの喫茶店のオムライス奢るからちょっと話聞いてよ」と物で釣り、相談している所存です。
「今日こそは言うぞ!とか気合い入れてもさ、我愛羅君目の前にしちゃうと全然言えないの。もうぜんっぜん」
「は?……おい、ちょっと待て。“今日こそは”って、お前子供の事分かったのはいつなんだよ」
「……十日……くらい、前……かな。えへっ」
「……はぁぁぁあああああ?!」
ガチャンとオムライスを掬っていたスプーンをお皿の上に落とし、同時にカンクロウ君が叫んだ。
他のお客さんもギョッとしてこちらに視線を寄越し「なに?!」とか言っていて、慌てて「声!」と鎮めるよう促した。
「待て待て……!おま、それは言えなさすぎじゃん!”えへっ”じゃねーよ!可愛くねんだよ!」
「どさくさに紛れて悪口言うなし!」
確かに、妊娠した事が分かってから十日も言えていないのは流石にまずいのかな、なんてのは自分でもよく分かっているつもりだ。
だからこうしてカンクロウ君に相談した訳であって。
完全にオムライスを食べる手が止まっているカンクロウ君に「だから相談したの」と言えば、返って来たのは盛大な溜息。
「……はあ、ったく、お前は考えすぎなんだよ」
「だってもし迷惑そうな顔されたら……私もう生きていけないよトラウマだよ」
「我愛羅に限ってそんな事ねえのはお前が一番良く知ってんだろ。あんなにお前に執着してんのによ。というか、言わねえ方がヤバいじゃん」
「う……確かに」
嘘をつかれるとか、隠し事をされるとか、そういう事に割と敏感な我愛羅君に、こんな大事な事を言わないで隠してたなんて知れたら…考えただけでも恐ろしい。
愛してるが故とは分かっていても、十日も言えなかった自分を殴ってやりたい気分になった。
「だろ。なら早く言え。まだ間に合うじゃん。このままひと月ふた月でも経ってみろ、お前、もう外の世界は拝めねえぞ」
「え、なにそれ怖すぎるんだけど!外の世界拝めないってなに?!」
「まあとにかく、そんなに考え込む事ねえじゃん。言ったら言ったで、大喜びだと思うぜ。表情はあのままだろうがな」
「……」
途中の”外の世界は拝めない”というなんとも怖い発言が少し気になったが、カンクロウ君なりに背中を押してくれたんだと思うと、少し気が楽になった気がした。
「ありがとう」と、残りのオムライスを一気に頬張っている彼に向かって素直に言えば、少しだけ目を見開いた後、照れ臭そうに「おう」と返事をくれた。
「ま、頑張れよ」
「うん。ありがとサンキュー!まじで今なら言える気がするしチョベリグーって感じ!」
「お前その、たまに変な言葉口にすんのやめろ。意味分かんねえじゃん」
「……うっさ」