03

「風影様、先程は、あの、すみませんでした」

「……」


既に会計を終わらせた風影様の後を追い店の外まで来たが、声をかけても振り返ってくれない風影様はやっぱりちょっと怒ってるのかななんて思い、すみませんという言葉ばかりでてきてしまう。
早くこの場から立ち去りたいという気持ちと、もう少し一緒に居たいという気持ちがグルグルしすぎて会話が続かない。


「……お前は、もう少し強引でも良いと言ったな」

「え、あ、すみません、あんな事」

「なら俺は多少強引に出る。ついて来い」

「え?あ、はい……?」


強引に出る。の意図があまり分からないが来いと言われ素直に風影様の後を追うと、たどり着いたのは食事をする前に仕事をしていた風影邸、の風影様のお部屋。

扉を開けられ、入れと言われるがまま電気も付いて居ない月明かりが差し込むだけの部屋に踏み入れると、後ろからバタンと扉の閉まる音が聞こえる。


「えあ、あの、風影様?」


訳も分からず後ろを振り向くと全身に圧迫感。
何?!と思ったのも束の間、私は風影様に抱きしめられている事に気付き、途端に心臓が大きく鳴りだした。


「か、風影さま、あの、」

「強引に出てもいいと言っただろう、俺はずっとお前をこうして抱きしめたかった」


ご、強引に出るってこういうこと?!なにこれ恥ずかしすぎるんですけど?!

一旦離して欲しいとねだるも聞いてくれず、抱きしめる力が更に強くなり、抵抗する気もなくなった私は大人しくするしかなかった。


「名前、お前の気持ちを聞かせてくれないか」

「え、さっき言いました、けど、」

「もう一度だ」


少し苦しいし、恥ずかしすぎるし、風影様の息が耳にかかってくすぐったくてなんとも言えない気持ちになる。

恐る恐る、ずっと好きでした、と小さい声で言うと、俺もだ。と返事が返ってきて。
顔が真っ赤になる感覚が押し寄せてきて部屋が暗くて、抱きしめられてて良かったと心底思った。


「名前、」

「は、はい」


ふと身体の圧迫感が消えたと思ったら目の前に風影様の顔。
月明かりに照らされている顔は、嬉しいような悲しいような、照れた様な困った表情をしていて、凄く美しくて思わずゴクリと唾を飲み込んだ。



「……俺に、ついてきてくれるか」



一世一代のような告白に心臓が高鳴って、その衝動で目の前が霞み、泣いてるんだと気づいた。
気づいたが最後、嬉しいだけなのにどんどん涙が溢れてきて、しゃくりあげそうになる自分の喉に喝を入れて


「はいっ、!」

そう言った。



おわり
(名前さまのことが大好きだった風影様でした)