今日も今日とて

「義母上、買い物へ行くなら俺も一緒に」

「んー?シンキ君今日お休みなんでしょ?私一人で行け、……」

「躓いたりしたらどうするんですか。俺も行きます」

「……過保護」



祝言を挙げてから約半年。

私はまさかの妊娠していて。
祝言が終わって一か月ほど経った時に、そういえば来るものが来てないという事に気づいた。

まさかと思ってこっそり病院へ行ってみると、そのまさかは当たっていて。
あの一回で妊娠してしまうとは…なんか凄い。

でもおめでとうございますと医師に言われた時は展開が早すぎるというか、子供欲しいよねみたいな会話自体、全くした事が無いもんだったからどうしたものかと不安になったのも記憶に新しい。

誰に相談すればいいのか分からなくて、悩みに悩んで禿げそうになるくらい悩んでいると、やっぱり気づいてしまうのか、我愛羅君にどうしたと聞かれて、そこで打ち明けたんだっけ。

なんで早く言わなかったんだ〜とかなんとかちょっと怒られたけど、凄く喜んでくれたみたいで本当良かった。
シンキ君も最初こそ戸惑っていたけど、今ではもう過保護ぷりが凄くて、私がちょっと出かけるとなると必ず一緒に来てくれる。


「最近また、大きくなりましたね」

「そうだよ〜。どんどん重くなってる」


無事買い物も済ませて、シンキ君と二人での帰り道。
私の膨らんだお腹を見て呟いている様子に思わず笑みが零れる。

私のお腹にいる小さい命はどうやら女の子らしくて、歳の離れた妹だけどよろしくねとシンキ君に伝えると表情こそ変えないものの、照れてる様子だった。相変わらず可愛いな。

それから風影邸に帰って、少し早いけど夕食の準備をしていく。
最近は少しお腹が大きくなってきたからなにをするにもゆっくり。
それでもシンキ君が甲斐甲斐しく手伝いをしてくれるから非常に助かっている。
臨月とかになったらもっと手伝ってもらおう。そうしよう。

手助けしてもらって、家事をして、皆でご飯を食べて。
こんなに助けてもらっていいんだろうかというほど、沢山の人に助けてもらってる。
私もそうだけど、私のお腹の子は幸せだ。




「名前」

「あ、お疲れ様。もう終わり?」

「ああ」


夜も更けて一人ソファに座ってテレビを観ていると、我愛羅君が隣に座ってきた。
いつも朝早くから風影としての公務をこなして、私の事も気遣ってくれて、正直なところ疲れないんだろうか?と思う。
私がまだ自分の世界にいる時は、仕事が終わって帰って来た時、ああ〜〜とか声に出しながら身体を伸ばしたりしてたけど、我愛羅君がそんな事してるのを見たことない。


「疲れてる?」

「…?なんだ」

「いや、我愛羅君の疲れたみたいな素ぶり、見たことないなと思って。働き者なのに」


テレビに向けていた視線を我愛羅君の方へ寄越してみると、お腹を撫でられる。


「守る存在が増えるんだ。疲れより嬉しさの方が大きい」

「そっか。我愛羅君はいいお父さんだねえ」


撫でている我愛羅の手の上から自分の手をかぶせて握る。
私の家に来た時はこんなに大きく無かった手は、いつのまにかこんなに大きく逞しくなっていて。
子供だった我愛羅君は私より大人になって、漫画の中の人物だったこの世界の人たちは、いつのまにか私の大事な人になっている。

こんな未来があるなんて、仕事しかしていなかった少し前の私には想像もつかなかった。
我愛羅君が現れて、居なくなって、今度は私が現れて。
そして帰れなくなって。
最初こそ、神様のアホ!とか嘆いてたけど、今となっては実は神様からのご褒美かもしれないと思うくらい幸せだ。

ふと原作は今どうなっているんだろうとか思う事もあって、読めないのが残念だと思う事も偶にはあるが、よく考えればストーリーを一番間近で見られるのは世界を跨いで来た私だけ。
漫画には描かれないストーリーの一部だったり、誰も知らないキャラクターの一面だったり、それを分かりうるのはこの私だけなんだと思う心が躍る気分になる。

手から感じる我愛羅君の暖かさに段々と瞼が重くなってきて、それに気づいた我愛羅君は私に一つ唇を落とす。


「名前、ベッドへ」

「…うん。寝よっか」


よいしょ、と声に出しながら腰を上げて、二人揃ってベッドまで。

支えてくれて、布団までめくってくれて。
一緒に横になれば丁寧に布団をかけてくれる、どこまでも優しい我愛羅君に、目を閉じたまま声をかける。


「我愛羅君、ありがとう」

「…ああ。おやすみ」




私の世界の、私の大切な人達、見てますか。
最初はとんでもない事に巻き込まれたと思ったけど、こっちの人達は違う世界の住人である私をこんなに優しく受け入れてくれて、今では楽しく過ごしてるよ。

明るい人、優しい人、厳しい人もいれば過保護で心配性の人もいるけど、私は皆の事を愛してる。


愛して愛されて、無償の愛の囲まれながら私はこれからを生きていく。
元の世界を思い返してしまう事もあるだろうけど、もう寂しくはない。
辛い事もこの先あるだろうけど、それでも私は乗り越えていけると思う。
だってね、



大好きな皆がいるから。
私はとっても幸せです。



今日も今日とてみんなと一緒



おわり