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それから宴は長い事続いて、へべれけとまでは行かないが、皆結構お酒を煽ったようで、会場はどんちゃん騒ぎだった。
皆で写真を撮ったり、サクラちゃんといのちゃんの二人組からは女子特有の話しをもちかけられたり。
我愛羅君のどこが好きなのと聞かれた時は、恥ずかしくなってしまいモジモジしていると多分その会話を聞いていた我愛羅君が後ろから私の頭を撫でてきて、それだけなのに、見せつけてくれるわねー!と二人はテンションが上がっていた。
もうそろそろ時間かな、と窓の外を見ると太陽が少し傾いていて。
朝からだから結構長い事この宴会やってんだな、時間の速さは恐ろしいと感じていると、突然カンクロウ君が叫んだ。
「ちゅーもーく!!」
最初に挨拶をした場所から、大きく手を振って、お前ら静かにしろー!と続け、そのまま私と我愛羅君が呼ばれる。
「もうそろそろ終了の時間だ。それで、最後に我愛羅から名前に言いてえ事があるらしいじゃん」
「え?なになに?」
カンクロウ君の横、窓際に二人並んで皆の方を見ていると、まさかの私に何か言いたい事があると。
一体なんだ。普通は披露宴とかの最後ってありがとうございました的な事を皆に向かって言って終わりみたいなんじゃ無かったっけ?
皆じゃなくて私に言いたいことがあるの?
疑問の目を会場にいる皆の方へ向けてみると、皆私と同じように疑問の表情をしていて、
そのままカンクロウ君の方を向いてみるとニヤニヤしていた。…え、ほんと何。
「名前、お前に言いたい事もそうだが、渡したい物がある」
「…渡したいもの、?」
ニヤニヤ顔のカンクロウ君の顔を見てゲンナリしている私に、我愛羅君は声をかけながら私の両肩に手を置いて、そのまま向かい合う形になった。
皆とわいわい楽しく過ごしていた時とは違う、真剣な表情にジッと見つめられてドキドキしてしまう。
皆にも見られているという意識もあって余計心臓が煩く、顔にも熱が集中した。
「もう、何度も言っている事だが、」
「…」
ポツポツと、私の方を真っ直ぐ見つめながら話しだした我愛羅君の言葉に耳を傾ける。
「……俺はお前を必ず、幸せにする。不幸だとは言わせない」
「…、」
「お前には感謝しかない。俺を、守ってくれてありがとう。受け入れてくれて、愛してくれてありがとう」
言いたい事とはこういう事かと、突然の愛の告白に身体の奥から何かが込み上げてくる感覚に陥った。
ああ、だめだ。目の前が滲んで唇が震える。
確かに、そのセリフは何回も言われた事があって、その度に私は泣いたり恥ずかしくなったりしてた気がする。
だけど今までより私は今感極まってしまっていて。
その理由は今だけにあって、今までに無かったもの。
だってそんなもの見せられたら泣いてしまうのは当たり前だ。
「…これを、受け取ってくれ」
「っ、ふ、う〜〜…」
それはいつの間に用意したのか、異なる大きさの二つの輪っか。
誰が見てもこれがなんなのか分かる。
これは、
結婚指輪だ。
何もかもが突然で、この世界で生きて行こうと内心必死だった私は、結婚指輪の存在を忘れてしまっていた。というか住まわせてもらってる身の私から指輪は?なんて言えないし、我愛羅君も誰も何も言って来なかったから、こっちの世界の人はそういうものを身につけないのかななんて思って、忘れてたフリをしてたのかもしれない。
それなのに今、目の前に差し出されて、驚きと嬉しさで言葉が出ない。出てくるのは嗚咽だけ。
「…名前」
「〜っ…ご、ごめ、嬉しくって…我愛羅君、ありがとう」
名前を呼ばれて、なんとか溢れてくる涙を自分の指先で拭いながら返事をすると、
我愛羅君は小さい方の指輪をケースから取り出して私の指にはめてくれる。
左手の薬指にはめられた指輪を、また滲む視界で捉えてから、今度は私がと小さく呟きながら大きい方の指輪を我愛羅君の指にはめた。
同じ指輪が二人の指にあるのを見ると、目元に溜まっていた雫が落ちた。
「名前、本当にありがとう。愛している」
私の頬を流れていった雫を、今度は我愛羅君が掬ってくれ、その手はそのまま頬に添えられる。
「私も、…愛してる」
二人で真っ直ぐ見つめ合って、微笑んだ後、我愛羅君の顔が近づいて、誓いのキス。
そっと触れるだけのキスをした私達を、祝福してくれるように会場の皆から歓声が上がった。
「私今、凄い幸せ」
「ああ、俺も幸せだ」