約束 01
※もし我愛羅君が再び逆トリップしてきたらというifのお話です
少年我愛羅君がいなくなって約一年。
夢だったのかと思いきや、我愛羅君が持つ瓢箪のコルクを発見した事で現実を突きつけられた私は途方にくれていた。
ナルトの漫画をしまっている本棚からこれが出て来たという事は、我愛羅君はきっと漫画を見て衝撃を受けてしまったに違いない。
そして私が、我愛羅君の事を知らないと言っていた事が、嘘だったと、気づいたに違いない。
そう考えると、酷く後悔してしまう。
本棚の前で、コルクを握りしめて、嘘ついててごめんと呟きながら気づけば泣いていた。
なんで一つの嘘にここまで涙が出てしまうんだと考えると、それは我愛羅君に対してついた嘘だからだと結論づける。
あんなに根は良い子なのに、化け物だと嫌われて、人を信用しなくなった子が、私に対しては少し心を開いてくれた気がしたのに、結局嘘をついてしまって、きっと酷く傷ついただろうと思うと嗚咽が止まらなくなった。
「があ、ら、君…ごめ、」
……
「名前…?」
「…え?」
膝を抱え丸まって、潰れてしまうんじゃないかと言う程コルクを握りながら我愛羅君の名前を呼ぶと、私しかいないはずの部屋から、私を呼ぶ声が聞こえた。
それに反応して、顔を上げ、声のした方を向いてみると、一年前に私の部屋に来て、そしていなくなった、我愛羅君が。
いや、正確には姿格好が成長している我愛羅君が立ちすくんでいた。
「ちょ、…え?え?あなた、が、我愛羅君?ですか?」
「久しいな。またこちらへ来られるとは、思いもしなかった」
「え、いや、…え?なんでそんなに冷静?プチパニック起こしてるは私だけ?て言うか涙引っ込んだよびっくりしすぎて」
さっきまでのセンチメンタルだった私は一体…。
突然また現れた、しかも成長している大人な我愛羅君に、そしてなぜが凛と落ち着いている我愛羅君に頭がついて行かない。と言うかツッコミどころが多すぎる。
とりあえず今は、かっこいいなちくしょー!と叫びたい。
「名前?どうした」
「へ、あ、ああ、ごめん。ちょっと大人過ぎてまともに見れないよ君のこと」
「そうだな、前にお前のところへ来てから、もう18年程経った。…お前は変わらないな、時間の経ち方が違うらしい」
「じゅ、ジュウハチ?!って事は我愛羅君、28歳?!私より年上になってるうう!」
驚いた。私の世界と向こうの世界とでは流れる時間がこれほどまでに違うのか。
私一歳しか年取ってないんだけど!
そりゃ落ち着いてるわけだよね!もう風影にもなってるだろうし、守鶴も抜けてるんだろうし…。
何より戦争も終わってるんだろう。向こうでは。
平和になった世界で、砂隠れの長として頑張ってるんだろうな、なんて思うと感極まってくる。
「我愛羅君、また会えて嬉しいよ」
「…俺もだ。ずっと、…ずっとお前に会って謝りたかった」
「え?謝りたかった?」
「ああ」
突然の、謝りたかった発言に、疑問の表情になる私。
それに対してなぜ謝りたかったのかをゆっくりと説明してくれ、最後にすまなかったと頭を下げられた。
…まさか私の事を殺そうとしたなんて、そんな事微塵も気づかなかったよ。
爆睡とは怖いもんだ。私は忍者にはなれないな。
「いや、私の方こそ、嘘ついててごめんよ。本、見たんだよね。そりゃ驚くよ」
「…お前が謝る必要などない。俺の心の弱さゆえ、…俺に世話を焼いてくれたお前を傷つけようとした。すまなかった」
深々と、頭を下げ続ける我愛羅君に、頭を上げるように促すと、渋い顔をしながらようやく顔をこちらへ向けてくれた。
…うわあ、かっこいい、
我愛羅君は真剣に謝ってくれているのに、私と来たら成長して可愛い子供からかっこいい大人になった我愛羅君に胸をときめかせている。というか萌えている。
だってかっこいいんだもん、しょーがないでしょうが。
ニヤニヤと、ふしだらに上がりそうな口角を必死に抑えつつも我愛羅君を見つめていると、急に我愛羅君が何か言いたげな表情になった。
「名前、」
「ん?なに、」
「…昔のように、抱きしめてはくれないか」
「…!」
え、だ、抱きしめて?抱きしめてって言った?言ったよね?
ていうか我愛羅君、君はもう完全な大人なんだよ、君の方が背も高いし体つきなんてもう…いやいや、だめだ私、冷静になれ。
我愛羅君は純粋な気持ちで抱きしめてくれと言っているんだ。
私みたいに思考が腐っている訳ではないんだ。
いやでも、…くっ、顔がにやける…!耐えろ、耐えるんだ私いいいいい!
「あ、だ、抱きしめぇ?………」
おいいい!声引っ繰り返らせてんじゃねえよ私いいい!
ああやばい、引かれた。絶対引かれたよ。
そう思ったが、我愛羅君は私が動揺して内心パニックになっている事を、抱きしめるのが嫌だから動揺していると勘違いしてしまったようで、嫌か?と言いながら悲しそうな瞳を向けてきた。
ちょおおおおおおお
なにこれ、拷問?!口角の筋肉を鍛えるトレーニングか何かですか?!
もう充分だよ!口角の筋肉鍛え上げすぎてピクピクしてるよ!
ていうか嫌な訳ないでしょ!むしろ抱きしめて?!私の事抱きしめて?!
「あ、えと、嫌じゃない、…から、ほら、おいでよ」
もうだめだ。ニヤニヤが溢れでてしまう。
それなら早いとこ我愛羅君を手中に収めてしまえばいいという考えに及び、少し顔を背けながら両手を広げた。
「…っ」
広げた両手めがけて、私の胸に静かに寄り添ってくる我愛羅君。
だけど私の方がはるかに身長が低い所為で、やっぱり私が抱きしめられているような感じだ。
ぎゅう、と力強く私を抱きしめながら耳元で、またこうしてお前に触れられる日が来るとは、なんて囁く我愛羅君にはお手上げ。
もう死んでもいいよ私。
というか苦しくて本当に死ぬかもしれないと危機を感じた私は、我愛羅君に回した手で背中を叩き、離してくれるよう頼むと、名残惜しそうに離してくれた。
「…すまない。つい、嬉しくて、な」
「いや、いいんだよ。私も、その、久しぶりに会えて嬉しかった、し」
今の私、絶対顔赤いよね。
ああ、なんて尊いんだ我愛羅君は。こんないい男、現代のどこ探したって居やしない。
…でもきっとまた帰っちゃうんだよね。
寂しいけど、それは仕方のない事だと思うから。
それならそれで、我愛羅君がこっちに居る間は楽しく過ごそうと決めた。
「ね、我愛羅君、今日金曜だからさ、明日と明後日、私休みなんだよね。折角またこっちに来たんだから、どっか行く?」
「…ああ。お前とこの部屋で過ごすのも悪くはないが、久しぶりに外も見てみたい」
「お、…じ、じゃあお出掛けしよう!今日は早く寝て、明日に備えよう!」
お前と部屋で過ごすと言った我愛羅君に一瞬怯むも、どこかへ行く事が決定した。