02
土日でやっとかなきゃな〜と思って会社から持ち帰った仕事なんて知るかと、サササと部屋の隅へパソコンを追いやった。
そうだ、知るか。
なんてったって我愛羅君が来てるんだ。
仕事より我愛羅君だ。そうだ、そんなの当たり前だ。
さっき突然、我愛羅君が現れて、感動?の再開を果たした私たち。
明日と明後日で、どこかへ出かける事に決定したんだけど、そんな事より今、すぐ用意しなけりゃならない物がある。
それは勿論、我愛羅君の服だ。
カッコいいし?大人の我愛羅君の格好、私結構好きだから?そのままでもいいと思うけど、流石に完成度の高いコスプレ野郎を外に連れて行く勇気は無い。
そして大人の我愛羅君に着せられるような服を私は持ち合わせていない。
小さい少年我愛羅君になら、私のTシャツとかで丁度良かったんだけど。大人だからね。
という事で、我愛羅君を一人家に残し、フルダッシュで近くの大型で激安の黄色い看板のお店へ走った。
ズボンはあのままでもいけそうだし、とりあえず下着と、上は長袖のTシャツでいいか。
靴はあのサンダルみたいなので我慢してく
れ我愛羅君。
コンビニってなんでも揃ってるな〜と、男物の下着と長袖Tシャツ、それとついでにビールと、忘れてはいけない帽子をカゴに入れてからレジへ急ぐ。
これで家帰って我愛羅君居ませんでした〜とか無いよね…?え、無いよね?!
「早く早くっ…」
レジを終え、またダッシュで家路へ。
若干緊張気味に自分の部屋の扉を開けると、そこには赤い髪の影があって、ふぅ、と息を吐きながら安心した。
いてくれて良かった。
「ただいま!」
「ああ、おかえり」
「…っ!」
扉が開く音に反応してこちらを向いていた我愛羅君に、ただいまと声をかけると、おかえりと返ってきて、堪らなくなる。
くう…!おかえりだって…!まじ堪らん…!
一人暮らしも長いし、少年我愛羅君はおかえりと言ってくれた事がなかったから、余計に嬉しさがこみ上げてきた。
「あ、そういえばさ、明日どっか行きたいところとかないの?電車でも、車でもいいよ。昔、車に乗ってプチ旅行したの、覚えてる?ああいうのでもいいよ?」
嬉しさを噛み締めながら、購入品が入った袋を無造作に置いてから、我愛羅君の行きたい所を探ってみると、意外な答えが返ってきた。
「…お前の、両親に会いたいんだが」
「え?!う、うちの親?!」
「ああ、昔、お前に世話になった事について、お前の両親に礼を言いたいと考えた事がある」
なんという律儀な…。
だけど私の両親も、我愛羅君の事を知っている。
そもそも私の家族はもっぱらの漫画好き。ナルトを読んでいない訳がない。
別に、親にくらいなら我愛羅君の事を話しても良いのは良いけど…。
それよりも不安なのは、私の両親は割とふざけている部分がある。ツッコミを入れて欲しいのかなんなのかは知らないが、訳の分からない事を言ったりしないだろうか。
………不安だ。
「名前?…やはり駄目か?」
「え?!いや、えーと、良いっちゃ良いんだけど、その…うちの両親も、我愛羅君の事知ってるから…騒がれたりするかもしれないと思って…というか変な人だから私の両親…」
「…お前の両親もあの本を読んでいたという事か」
「そ、そうですね」
サラリと、我愛羅君を知ってる事を伝えるものの、我愛羅君はそれでも両親に会いたい様で、お前が良いなら俺は行きたいと言ってきた。
私と言う女を、産んでくれてありがとうと一言、それだけどうしても伝えたいのと、私みたいな優しく聡明な人の両親はどんな人なのかが気になるらしい。
え、私聡明なの?私の事そんな風に思ってたの?
それなら尚更不安だ。私達一家に聡明という言葉が似合う人なんか一人もいないのに…。死にそう。
「まあ、でも我愛羅君が会いたいって言うなら、行こっか…?」
「ああ。…ありがとう」
「ふお、…い、良いんだってばよ」
柔らかく微笑んでくる我愛羅君に、思わずナルト君の口調で喋ってしまう。
だけどそんな事気にならないくらい、明日自分の実家へ帰る事がとても不安に思う。
まあでも、いっか。
「よし!じゃあ明日は早起きだよ!ちょっと遠いから、新幹線で行こう!」
「…シンカンセン?」
「ああ、昔電車乗ったよね?我愛羅君の世界でいう雷車みたいな」
「そういえば最近、開通していたな」
「その雷車よりね、ずっと早い乗り物だよ。遠出する時は大体新幹線に乗るの」
明日はそれに乗るからね〜と言いながら、先程買ってきた我愛羅君用の衣類を開ける。
ご飯作ってるから、先にお風呂入ってきたら?という私に短く返事をし我愛羅君はお風呂へ、私はキッチンへ立ち、料理を始めた。
あ、なんか夫婦みたい。デヘヘ。