女子に萌える 01
「来たわね!久しぶり!」
「お、お久しぶりです…!」
今日は私一人、木の葉へ来ている。
いつもなら木の葉へ出向く時は我愛羅君の用事ついでに一緒に来るんだけど、今日は違った。
数日前、たまたま砂隠れに来ていたテマリちゃんが私に「そういえば久々に休みが重なったサクラ達が女子会やるみたいだぞ」と言って来た。
女子会…!
砂隠れには気の知れる女友達が全然いない私は、いつもカンクロウ君を呼んでは女子会と称して食事をする事が多かったが、カンクロウ君は所詮男なのだ。
女子には言えるけど男子にはなかなか、みたいな事も多くて、気づけばテマリちゃんに私も参加したいと申し出ていた。
そして今に至る。
時刻は夕刻。
すでに皆集まっていて、少し遅れて私も指定された居酒屋へと足を運んだ。
「今日は久々に飲むわよー!」
「ちょっとイノブタ、私に介抱させる様な真似しないでよね!」
「あーら!あんたこそ、医療忍術が使える身分で飲みすぎて泥酔なんて無様な事にならない様にしなさいよねー!」
もう既に飲んでいるんであろう、いのちゃん、サクラちゃんは、漫画で見たままのやりとりをしていて。微笑ましい。
その横で一人静かにお酒を傾けているヒナタちゃんに会釈をして、テーブルを挟んだ向かい側に腰を下ろした。
「名前、遠いところよく来たな」
「テマリちゃん、この前ぶりです」
「ああ、今日はこの後ウチに泊まってくだろ?」
「え、いいんですか!是非お世話になります」
私の隣に座るテマリちゃんに、思ってもいなかった事を言われテンションが上がる。
久しぶりにシカダイ君とシカマル君にも会える〜なんて喜んでいると、斜め向かいに座っているサクラちゃんに声をかけられた。
「名前ちゃん、今日はあなたも来てくれた事だし、名前ちゃんの話聞かせてよね!」
「え、私の話?」
「やーん!私も聞きたい!ね、ヒナタもそう思うでしょ!」
「あ…名前ちゃんがよければ、」
祝言の時聞きそびれちゃったのよねー!とサクラちゃん。
お酒を片手に前のめりになりながら、三人共が私へと視線をよこす。
一体何を聞きたいのか疑問すぎて「私に聞きたい事なんてあるんですか」と呟くと、一番に口を開いたのはこれまたサクラちゃんだった。
「そんなの決まってるじゃない!我愛羅君とのコ・ト!女子会はそういう事話すのが定石ってもんでしょー!」
「が、我愛羅君との事、ですか…」
我愛羅君との事、我愛羅君との事……うーん、何を言えばいいんだ。
なぜかキラキラした視線を寄越してくる向かいの三人に、何を言おうか考えあぐねていると、隣に座るテマリちゃんが唐突に質問を投げかけて来た。
「そういえば、今日は娘の事は誰が見てくれてるんだ?」
「あ、我愛羅君が見てくれてます。ちょっと心配ですけど、シンキ君もいるし大丈夫かなって」
「あーん良いなあ、私なんてサラダが小さい頃はサスケ君居なかったから大変だったわよ〜」
私が言った事に対して、羨ましそうにサクラちゃんが言う。
そうか、確かサスケ君は旅に出てて、今でさえあまり帰って来ないんだっけか。
「でもサクラさん、大変だったって言ってもサラダちゃんはとっても言い子に育ってて、凄いです。私なんか我愛羅君…というかシンキ君に頼りっぱなしで、」
そうだ。
子育てなんか勿論した事ない私はいつも我愛羅君やシンキ君に頼ってばっかりで、ほとんど一人でサラダちゃんをあそこまで育て上げたサクラちゃんは凄いと素直に思う。
いつもシンキ君に注意されてる私とは大違いだなあ。
「なーに言ってんの!男には頼ってなんぼってもんよ!サクラはアレだけど私だって旦那に頼ってばっかりだったわー」
「え、いのさん、そうなんですか。…まあでもサイさんは優しそうですもんね。なんでもやってくれそうで」
「そうよ〜、うちの旦那ったら優しくて子育てにも積極的だったし?それにイケメンでしょー?もう満点だわ」
「ちょっといの!惚気ないでよね!イケメンってならサスケ君が一番よ!」
途中からズイズイと口を挟んでくるいのちゃんに、サクラちゃんも食ってかかる。
昔から変わってないんだなあこの二人は。
まるで漫画を読んでいるようだと、完全に第三者の聞き役になっていると、唐突に目の前に座るヒナタちゃんが「私はナルト君が一番かっこいいと思う、」とまさかの惚気。
いやいや、ヒナタちゃん、だからそんな可愛い顔してると襲われるって(私に)
そんなヒナタちゃんの呟きを聞いていた二人は、「ナルトが一番な訳ないでしょ!」と口を揃えて言っている。
まあ、ナルト君はかっこいいというより可愛い、だもんな。うん。
「…まあいいわ。それはそうと名前ちゃん、娘ちゃんが産まれてから我愛羅君とどうなの〜?」
「へ、…そ、それはどういう、」
「やっだ決まってるじゃなーい!夜の方よ、夜の!」
「?!」
「サクラ、あんたやるわね。私も気になってたところよ」
結構お酒が回って来ているからなのか、それともこれが普通なのか。
とんでもない事を聞かれたと思うのは私だけなのか?と、助けを求めるように今まで静かだったテマリちゃんの方を向くと「私の方を見るな!」と一喝される。
これはもう二人の独壇場だ。
答えなきゃならない様な今の空気に打ち勝つすべなんてなく、当たり障りのないくらいに私は口を開いた。
「む、娘が産まれてからは…い、一回も…ない、です」
「え??!!」
「ちょっとアンタそれ本気で言ってんの??!」
「え、ダ、ダメですか?」
娘が産まれてから約一年ほど、私は特に忙しいなんて事はないけど子育てに必死で、我愛羅君は相変わらず忙しい日々を送っているのだから、夜の逢瀬なんてそんな時間はない。
子供が産まれたら皆だいたいそんなもんじゃないの?え、違うの?
「もう、妊娠中だって我慢してるもんなのよ男は!産まれてもう結構経つんでしょー?たまには構ってやらなきゃ!」
「そうよ名前ちゃん、ねえテマリさんだってそう思わない?」
「な、わ、私に振るな!我愛羅は私の弟なんだぞ!弟のそんな話知るか!」
不意に話を振られたテマリちゃんは顔を少し赤くしながら「やめろ!」と叫ぶ。
確かに、実の弟のそんな話、聞きたくないよね。なんかごめん。
というか、逆にサクラちゃんといのちゃんはどうなんだ。
そこまで言うなら子供が産まれた後もなかよししてるんだろうか。…うお、なんか気になる。
「そ、そう言うお二人、と言うかヒナタさんも子供が産まれた後は、その、仲良くしてるんですか」
「っ、!ごほ、名前ちゃん…そんなストレートに、」
「なーに噎せてんのよヒナタ!あんたはナルトと仲良くやってんでしょ。ボルトとヒマワリちゃんの二人も産んどいて今更なに照れてんのよ。まあ私は今でもしょっ中よ!現役現役!」
「………」
私の質問に飲んでいたお酒で噎せてしまったヒナタちゃんを余所に、いのちゃんは今でも現役だと高らかに笑う。
サイ君といのちゃん…美男美女の夜の逢瀬…ダメだ萌える。ラブラブかよおおお
既に頬が赤くなっているいのちゃんに、おお〜と感嘆しながら、急に何も喋らなくなったサクラちゃんが気になった。
「サ、サクサさん…?どうし、……」
「わ、私はサスケ君がいないからできないのよおおおおお!!」
「え、ちょ、サ、サクラさ、」
「男が我慢してるって言うよりも、我慢してるのは私の方なのよおおお!!」
突然堰を切った様に号泣しながら叫び出すサクラちゃんに一同が騒然となる。
ああ、そうか。サスケェが帰って来ない所為で色々我慢してんだな。
サスケの野郎、こんな可愛い嫁を放ったらかしにして!怒るぞ!
プンプンと内心サスケェに対して怒っている中、サクラちゃんは相変わらず泣いていて、いのちゃんは「泣かないのー!」とか言っていて、ヒナタちゃんは「サスケ君もまたすぐ帰ってくるよ」なんて言って寄ってたかってサクラちゃんを慰めている。
テマリちゃんはそんな三人を気にする事なくお酒を飲んでいて、チラリと伺って見ると「我愛羅は…」と口を開いた。
「え?」
「我愛羅は…その、なんだ、夜の方はお前に酷くしたりしていないか」
「ふぁ、?」
「あいつは、今でこそ丸くなったもんだが、外で優しい男こそ、その、夜になると乱暴になったりだとか言うじゃないか。我愛羅は昔がアレだったからな。たまに心配になるよ」
テマリちゃんもまた、お酒の所為で顔がほんのり桜色に染まっていて、ポツポツと呟く様に私に話しかけてくる。
…それは外面は良くても家庭内では横暴な旦那、みたいな事を言っているんだろうか。
いやいや、我愛羅君に限ってそんな事はないよ。まあ、たまに意地悪と思う事はあるけど。
それでもいつも優しいものだ。
「いや、朝も昼も夜も、これでもかって程優しいですよ。たまに意地悪されますけど」
「そうか。なら良いんだが」
「ちょっとなになにー?テマリさんったら興味ないフリしてやっぱり気になってるんじゃなーい!」
「な、私は名前を心配しているだけだろう!我愛羅がどうのこうのなんざ興味ないね!」
「またまたあー!で、名前ちゃん、我愛羅君とのそっちの方はどんな感じなのよ?」
「え?!」
我愛羅、と言うワードが聞こえたんだろう。サクラちゃんを茶化し混じりに慰めていたいのちゃんがまた、グイグイモードで話に割り入ってくる。
う、サクラちゃんには悪いけど、泣いてくれたおかげで話が逸れたと思ったのに…!
どうなのどうなの?と相変わらず楽しそうに聞いてくるいのちゃんに、ええい!と思いながら「普通ですかね」と答える。
「ふーん?普通かあ。…まあもっと掘り起こしたい気もするけど、今日はここまでで勘弁してあげるわ」
「お、…ありがとう、ございます?」
意外にも呆気ない返事をしてきたいのちゃんに逆に動揺してしまったが、よく見てみるといのちゃんはものすごいニヤニヤしていて。
これはまた女子会に呼ばれて根掘り葉掘り聞いてくる気なのか?!それまで楽しみは取っといてあげるわ的な事なのか?!
わあああああ怖いいいいいい
「…?名前ちゃん、どうかした?」
「あ、ヒ、ヒナタさん、私なぜか未来にとてつもない恐怖を感じているんですけど…」
「?、なんだか分からないけど…私に何かできる事があったら言ってね」
いのちゃんのニヤニヤに、恐怖を覚えていると、目の前でサクラちゃんをよしよしと撫でているヒナタちゃんが女神の様な声をかけてくれた。
うおおおおヒナタちゃんんんん!結婚してええええええ!
なんていい子なんだ。本当にいい子だ。慎ましくて優しくて。
最早後光が差しているくらいに思えてくるヒナタちゃんを拝んでいると、私たち女子会のメンバーではない、低い声が後ろから聞こえた。
「…おい、サクラ」