彼女のそばで
どうして会場に戻ってきたのかと、今だに目を覚まさないこいつの閉じきっている瞼を眺めがら一人心の中で呟いた。
それと同時に、こいつが会場へ戻って来た時なぜ俺はその場にいなかったのか、眠る名前の頭に巻かれた包帯に視線を向ける度後悔の念が頭を支配した。
「すまない、」
ポツリと思わず呟いてしまう。
こいつには、辛い思いをさせてしまうばかりだと、若い自分を思い出し眉間に力が入って、拳にも力が入った。
目を覚ますまでここに居てやりたい。
目が覚めた時、俺が居たところでこいつは安心してくれるのだろうかとも思うが、誰も居ない部屋で一人目を覚ますよりは、誰かが居た方が、それが憎しみの対象である俺だったとしても少しは安心してくれるんではないだろうかと、半ば願い、半ば償いの様な思考で規則的な寝息を立てる名前を見つめていた。
「……あれ、我愛羅、何でここに?」
不意に病室の扉が開いて、そこから入って来たのはサクラだった。
自分の里の者だから様子を見に来たんだと言えば、そっかと短く返して来た後、眠る名前の顔色を伺いつつ点滴の様子も見ていた。
重症と思われる患者を一人一人見て回っているんだという彼女は名前の大方の治療を施してくれた本人だ。
「幾分か、顔色は良くなっている様だ。……サクラ、お前には感謝している。他里の者にここまで、」
「なーに言ってんの。怪我人に自里も他里もないわよ。それに、感謝するならサスケ君にね。ここまで運んでくれたのはサスケ君なんだから」
「…ああ。そうだな」
手際よく点滴を交換し、後は目を覚ますのを待つだけねと言いながら扉の方へと向かうサクラにもう一度礼を言えば、お安い御用よと、ヒラヒラ手を振りつつ出て行った。
本当に、彼女には頭が上がらない。
サスケもいい妻を持ったものだと思っていると、今度は控えめなノックの音が聞こえ、その直後、扉の開く音が聞こえた。
「あ、れ、我愛羅のおじちゃん」
「え!風影様いんの?」
「おいデブ、早く入れよ」
ぞろぞろと、何やら毛布を重たそうに持っているシカダイ達が入って来て、俺がいることに驚いている様子だった。
なぜそんなに毛布を何枚も担いでいるんだというのも気になったが、シカダイの後ろから入って来た、確かチョウチョウと言ったか、シンキと戦って破れた忍が気になり気づけば声をかけて居た。
「…お前は確か、シンキと当たった…。身体はもういいのか」
「え!アチシの事覚えててくれてんのお〜?!もう全然大丈夫!あれくらいでヘコ垂れるアチシじゃないっしょ〜!」
「おいチョウチョウ、あれくらいって言い方はねーだろ。てかあれくらいで負けてんだからちょっとはしおらしくしろっての」
「なーによ、あいつだって充分失礼な事言ってましたけど〜?」
「おま、父親の前でそんな事言うなよ、ったく、めんどくせー」
「はあ、もう早く毛布渡して次の病室行くよ。これだからデブは」
俺が声をかけた事によって、ギャアギャアと、しかし怪我人が眠っている手前、声は少し抑えめに騒いでいる三人を見ながら微笑ましく思う。
やはりナルトが長を務める木の葉の里の者達はこうも賑やかで良いものだと考えていると、騒ぎの中心であるチョウチョウが突然、俺の顔と名前の顔を交互に見ながら質問を投げかけて来た。
「てゆうかこの女の人って、風影様の良い人〜?」
「なっ!デブ!そんな恥ずかしい事風影様に向かって聞くなよ!」
「え〜、だって気になるっしょ〜?心配そうに見つめててさ、如何にも愛おしいって感じじゃん?」
愛しい、か。
そんな事考えもして居なかったが、名前の事が妙に気になるのは、自身が犯した罪への償いだけではもしかしたらないのかもしれない。
かと言って愛しく思うのかと問われても、はっきりそうだとは言えるほど良くわかってはいないが。
自分の心情を考え出してつい黙ってしまった俺に、申し訳なく思ったのかシカダイがいつもの調子はそのままに謝ってくる。
めんどくさいと言う口癖はシカマルそっくりだ。
「構わない。……こいつは、良い人と言う訳では無いが、大切には思う」
「きゃ〜!大切な人だなんて、また謙虚なところが素敵だしい〜!」
「おっちゃん、あんまりこいつの質問に真面目に答えなくて良いんだぜ、めんどくせえし」
謙虚なところとは一体どう言うところなのかは良く分からないが、目を輝かせて黄色い声をあげたチョウチョウに対し、シカダイがため息を吐く。
そしてついに痺れを切らしたいのじんが俺に一枚毛布を押し付けて来た後、チョウチョウの腕を引っ張り、三人一緒に病室を出て行った。
その際、この病室に来た本来の目的は、少し冷えて来たので各怪我人に毛布を配っていたんだとシカダイが言い残して行った。
そういう事だったのか。