もしかしてそういう関係?
「あれ、なんか変な事言いました?私」
「え?、あ〜、いや、そんな事はねえけどよ、」
そんな事がないのならなんでそんな気まずそうなんだ。
金髪の方はなんだか歯切れが悪いし、赤毛の方は表情こそ無に近いが少しキョトンとしている気がして、もしかして二人はそういう関係?それでお忍びで観光にでも来ているのかと思い込み、察しがつきましたと勝手に話を進めた。
「?、察しって、俺達の事分かったのか?」
「え、あ、はい。なんとなく」
「お!なんだよ、ようやく気づいてくれたのか〜!本当に知らねえのかと思ったってばよ!良かったな我愛羅、気づいて貰えてよ!」
気づいて貰えた事がそんなに嬉しかったのか、バンバンと赤毛の背中を叩く金髪。
だが男性同士の恋愛なんて、今時珍しい事では無いが、どちらかと言うと気づいて欲しくないものなのではないのか。
しかも今日会ったただの小料理屋の女に、突然あなた達の事、察しがつきましたなんて言われてこんなに喜ぶ事なんだろうか。
しかもこの金髪は、本当に知らないのかと思ったと言っていた。
知ってる知らないの話なんて私はしていないのに、どういう意味だ。
なんだか話が噛み合ってない気がすると、金髪の言った事をもう一度思い出して考えていると、疑問の表情になってしまっていたのか、赤毛の方が「どうした」と話しかけきた。
「あの、ハッキリ言われるともしかしたら嫌かもしれないんですけど、その、お二人はそういう関係で、お忍びか何かで砂へ来られたんです、よね?」
考えるより聞いてみた方がすぐ解決するなと思い失礼を重々承知の上で聞いてみる。
さっき気づいてもらって嬉しそうな素振りを見せていたけど、それでも男性同士のカップルは軽い気持ちでそういう関係?と聞かれるのを嫌がる人も多いだろうし、それにもし私の勘違いだったとしたら、ふざけんなと怒られる可能性も、無きにしも非ず。
店をやっている分、お客に対する会話は言葉を選ばないと、経営に関わってくる。
…とまあ、それっぽい事を思ってはいるが、結局ちょっと気になるだけである。
なんだか話が噛み合ってない気がするのが、気になるという意味だけど。
「……一体何を勘違いしているんだ」
「…っ、く、くく、我愛羅と俺が、くく、一体どう考えたらそうなるんだってばよ、ひー、おもしれえ」
私が質問をした後、少しの沈黙があってから赤毛は呆れかえり、金髪は笑いを堪えながらそんな訳無いと言っていて。
やっぱり話噛み合ってなかったんだと、とりあえず勘違いを謝罪。
だが、そういう関係じゃないのなら、気づいてくれたというのは何なのか。
「くくっ、別に謝らなくても良いってばよ。我愛羅、俺達そんな風に見えてるらしいぜ」
「…冗談はよせ、ナルト、お前には家族がいるだろう」
「本当すみません、変な事言って、…あの、食事続けてください。私奥で夕飯食べるので何かあったら呼んでくれますか」
金髪の方は笑いが治らないようで、ずっと赤毛を茶化し続けているが、赤毛の方はテーブルに肘をつき、勘弁してくれと言いたげな振る舞いをしている。
その赤毛の態度になんだか少し気まずさが出てきてしまって、これ以上は何も聞かないでおこうと店の奥に行って夕飯でも食べる事に決めた。
「なんだよ、一緒に食おうぜ。お前おもしれえしな!」
「え、」
営業中に作って置いていた自分の夕食を温め直して奥へ行こうとすると、まさかの一緒に食べよう発言をしてくるので戸惑ってしまった。
いやいや、気まずいから奥に行こうとしたんだよ。察してくれ頼むから。空気を読んでくれ、頼むから。
きっとあからさまに嫌な顔をしてしまっていたんだろう。うん、嫌なんだけど。
何も言わずに黙って立ち尽くしている私に、金髪は相変わらずこっち来いよと言っているが、赤毛は私の表情を見てから金髪に、嫌がっているだろうと耳打ちするように言っている。
聞こえてるんだけど。
「飯は大勢で食った方が美味いだろ?いーじゃねーか、な?」
「いや、まあ、それは」
「じゃあそっち!座れってばよ!」
結局、赤毛が何と言おうと、私が何と言おうと、強引に話を進める金髪に押されて指定された席、赤毛の横に座る。
嫌がっている事を察して気を使ってくれた赤毛の横に座るのはちょっと気まずい感じもあったが、金髪の横よりは静かそうだし、まあ良いかと、いただきますを言いながら自分のの食事に手をつける。
「そういやお前、一人でこの店やってんのか?家族は?」
「ああ、一人です。結婚もしてないし、恋人もいないし、兄弟もいないし。両親はとうに亡くなりましたからいません」
黙々と自分の食事に手を伸ばしていると、金髪からなんとも味気のない質問が飛んできた。
そんな質問、もう何百回とお客に聞かれたので、既に定型文のようになっている言葉を返す。
そしてその定型文を言った後、どんな返事が返ってくるかも分かりきっている。
「…そ、そうか。悪い事聞いちまった、かな。でも一人で店やってるなんてスゲーってばよ。苦労しただろ」
ほら。やっぱりそう返してくる。
最初こそこんな質問をして、返事をすると悪びれるお客には心底うんざりしたものだが、最近はもう慣れてしまって何も感じなくなった。
そもそも私より苦労している人なんて沢山いる。今でこそ小さな争いも減って、大きな戦争も無いが、昔は争いの所為で沢山の人が死んだんだ。しかも私達みたいな一般人なんて、巻き込まれてなにもできずに只死んでいく。
私同様、親を亡くして孤児として生きていっている人なんてザラだ。
そんな中、家も、小料理屋という財産を残された私は運のいい方だと思う。
「私より苦労してる人なんて沢山いますよ。…両親が死んでも、私にはこの店がありましたから。運は良い方ですかね」
両親が殺された時は、どうして私の両親が、里を守る為に存在している忍に殺されなきゃならないんだとか、これから私はどうして生きていけばいいんだとか、そういう怒りもあって、復讐してやりたい気持ちもあったが、結局私の両親を殺した忍を、誰も詳しく教えてはくれなかった。
ただ、砂の人柱力が殺ったんだという事しか教えてくれず、探し出そうとした事もあったが、砂の人柱力というワードを出すと、皆怯えて直ぐに口を閉ざしてしまっていた。
それでも里の人に聞く以外の方法が思いつかなかった私はそれ以上何もできなかった。
そしてだんだん、今私がやらなきゃならない事は復讐よりも両親が残してくれたこの店を存続させる事だと考えるようになり、必死に料理の勉強をして、憎しみに蓋をしていった。
どこにいるかも、生きているかも分からない両親を殺した人柱力を、許した訳でもないし、もし見つけたらきっとまた復讐してやりたいと思うに違いないが、第四次忍界大戦も終結した今となっては、とにかく世界が平和ならそれでいいやと思っている。
…いや、そう思いたいと、考えているだけなのかもしれないが。
「ご馳走様」
なんだか嫌な記憶を思い出してしまったなと思いながら、早々に食事を平らげ食器を流し台に持って行こうと席を立つ。
二人はずっと黙っていて、少し空気が悪くなってしまったかもしれないこの場を離れたいと、流し台の近くに置いてあった煙草を持ち、外へ出る為二人に一言声をかけた。