終わりの始まり

 東堂くんの言葉がうまく飲み込めない。口をパクパク動かしても言葉が出てこない。頭が働いてくれない。

「俺と付き合ってくれ」
「……喜んで」

 そんな私を急かす事なく次の言葉を告げてくれた東堂くんには感謝しかない。笑顔で返そうと思ったけれど、私はうまく笑えていただろうか。
 私が返事をすると静かになっていたこの場所が一気に賑やかになり「おめでとう!」とか「青春だな」とか「幸せにな!」なんて言葉が飛び交ったので思わずお辞儀をしてしまう。



 また無言になった東堂くんに連れられたのは観覧車で、ちょうど空いていたから待たずに乗れた。

「……いつから?」

 二人っきりの空間は未だ緊張するけれど、思い切って聞いてみた。

「多分最初からだな」

 東堂くんの言葉に思わず「一緒だったんだ」と笑ってしまった。なんだ、それならもっと早くに言えば良かった。

「言おうと思っていた時に散々逃げられたからな」

 私の心が読めたらしい東堂くんは笑いながらそう言った。確かに合同任務が始まる前まで逃げまくっていた。

「だって東堂くんは高田ちゃんしか見てなかったじゃん」
「花子も同じようなものだろう」

 東堂くんの言葉にそれもそうかと思うが、私と東堂くんでは熱量は違ったと思う。それを言うほど野暮ではないが。


「遠距離かー」

 任務であちこち行っているから距離はあってないようなものだが、京都校なら寮で会う事も多かっただろうと考えると京都校の人が羨ましくなる。

「卒業したら一緒に住むか」
「だいぶ先だね」

 果たしてそれまで付き合えているのかと考えていたら頭をガシガシ遠慮なく撫でられた。嬉しいけどセットが崩れるなぁ、なんて考えてしまう。

「大丈夫だろ」

 東堂くんの言葉はどこか確信めいていて、そうだと良いなと思いながら私も頷いたのだった。

「ちなみに高田ちゃんのライブは行くよね?」
「勿論。その方が花子も楽しいだろ?」

 うん。ライブは一人より二人の方がより楽しい。それに気付かせてくれた東堂くんと一緒に楽しめるのは素直に嬉しい。

「高田ちゃん、喜んでくれるといいなぁ」
「そういえば花子はいつも高田ちゃんと何を話してるんだ?」
「ガールズトーク」

 それ以上でもそれ以下でもない。
 短い時間だからサクッと話して終わり。基本的にはその日の髪型とかネイルの話だ。男子には分からないだろう。

「俺の可愛い天使達が話している姿はいい絵になるだろうな」

 東堂くんの言葉に思わずクスリと笑ってしまう。真面目な顔をして言う言葉ではないだろうけど、言ってしまう辺りが東堂くんなのだろう。

「それじゃあ、東堂くんの彼女が天使になれる様に買い物に行きましょう」

 先に観覧車から降りて手を差し出してくれた東堂くんの手に自分のそれを重ねて降り、そう言って笑うと「仰せのままに」と恭しくお辞儀された。
prev | next
|| top