魔法の効果は如何程
鏡の向こうの自分に言い聞かせる様に口にし深呼吸をして家を出る。今日は東堂くんと遊園地に行く日だ。
◆
「……遊園地って、こういう…………」
甘い展開を期待した私が馬鹿だったのだろうか。いやでも、まさか東堂くんが担任みたいなことをすると思わなかった。
「すぐ終わるだろうし、終わってから回っても十分時間はあるだろう」
「ソウデスネ」
呪霊関係なら先に言って欲しかった。
遊園地だから動き難い服装ではないが髪を巻くこともがっつり化粧することも、呪霊を祓うのが前提だったのであればしなかったのに。汗かいてボロボロになる方が嫌だなと考えて首を左右に振る。困っている人がいるのに自分勝手な考えはやめよう。
両頬を掌で叩いて自分を鼓舞して仕事モードに切り替えた私は東堂くんの背中について行った。
◆
「あっつ……」
全て雑魚ではあったが数が多かったこともあり、祓い終わった後には汗が滲んでいたのでハンカチで拭う。ああ、これは化粧をやり直さねば。でも今からやり直したら遊ぶ時間減るよなぁ、なんて考えていると「お疲れ」といつの間にか消えていた東堂くんがペットボトルのお茶を持って戻ってきた。
「お疲れ。ありがとう」
差し出されたお茶を遠慮なくもらい一気に飲み込む。喉が渇いていたからどんどん流し込んでいった。
「どこから回る?」
「あー……一旦化粧直しても良い?」
どこから出したのか分からない遊園地のパンフレットを広げながら聞いてきた東堂くんに質問で返すと「直す必要ないだろ」と言われてしまった。
「東堂くん、乙女心をわかってよ」
「そういう花子は男心を理解するべきだ」
東堂くんの返しを聞いてこれは言い合いになりそうだと口を紡いで手鏡で化粧が落ちていないか確認する。少し落ちてはいるが変な落ち方ではなさそうだとわかれば胸を撫で下ろし「それならジェットコースター乗りたい。あの怖そうなやつ」と最初の質問に答えながら目の前にそびえ立つジェットコースターを指さした。
その言葉に納得いかない顔をしていた東堂くんを引き摺るようにジェットコースターの列へ向かう。
列に並んでいる最中も男心について語られたが、その辺の男からナンパされたとしても撃退するくらいの腕はあると自負しているし、そもそも可愛い格好をするのは好きな人がいるからなのだ。私の方を向いてくれるなら勘違いも嫉妬もしてくれていいのにとはまだ言えないけれど、そのくらい東堂くんのことは思っているのに伝わらない。
「東堂くんはジェットコースター好き?」
「スリルのあるものは大抵好きだな」
「そっか。私は東堂くんが好きだよ」
私が言葉を言い終わるのと漸く順番が回ってきて座ったジェットコースターが動き出したのはほぼ同時だったので、近くにいた係員さんは驚いた顔をしていた。それでもジェットコースターはしっかり動いた。隣にいる先程までずっと何かしら口を開いて話しかけてきた東堂くんからの返事はなく、それも仕方ないかと思いながら頭を空っぽにしてジェットコースターを楽しんだ。
「あー、楽しかった」
無事に最初の地点に戻って降りてから伸びをする。
未だに東堂くんからの言葉はないので今日は解散した方がいいかもしれないと思って振り返ると「花子」と名前を呼ばれた。
「俺も好きだ」
漸く口を開いたかと思うと思ってもいなかった言葉を大勢の前で告げられ顔が赤くなるのを感じながらその場に固まった。