遊園地は誘惑でいっぱい
「……絶叫系好きだったんですか?」
「ん? 人並みには好き!」
「なら並びましょうか」
「うん!」
お揃いのカチューシャをしているカップルや友達同士で来ている子たちが視界にチラチラ入るけれど、恵くんがカチューシャをしている姿が想像出来ないのと、可愛い姿もカッコイイ姿も全部私だけが知っていたいという我儘から『カチューシャお揃いにしない?』と言わなかった。
恵くんも言うことがなかったからこれでいいと思うのに、お揃いのものを持って仲良さそうなカップルが通る度に少しだけ羨ましくなって。
「その前にちょっと付き合ってください」
恵くんの言葉に首を傾げつつ了承した。
◆
「恵くん、お土産買うなら最後がいいんじゃない? ……あ、もう帰りたい?」
「まだジェットコースター乗ってないのに帰りませんよ。──コレ、欲しいんでしょう?」
そう言った彼の手には私が見ていたカチューシャがあって、私が他の人に夢中だった間彼が私のことを見ていてくれたんだと胸が熱くなる。
「えっと、」
言おうとした言葉を飲み込む。
ここはきちんと自分の言葉を、気持ちを伝えるべきだ。
「欲しいのは欲しいんだけど、お揃いにしたくて……お揃いだったら他のものでも良いし。あと、あとね。カチューシャお揃いにしたとしても着けるのは二人の時がいい……」
彼は私の言葉を最後まで聞いて、顔を手で覆った。
どうしよう、不味いことを言ってしまったかと謝罪の為に私が口を開けるより早く彼が口を開く。
「そう言うこと、俺以外の男には絶対言わないでくださいね」
そう言った彼の頬が心なしか赤らんでいるのは私の妄想ではないはずだ。
「恵くん、そんな事言う人だったんだね」
他意はない。
ただ純粋に、彼は嫉妬の類いをしないと思っていた。
「しますよ、そりゃ。──やっと手に入れたんですから」
「──え?」
「先輩は知らないと思いますけど、俺、一目惚れしてたんで」
そんなこと初耳だ。
そしてふと以前言われた真希ちゃんの言葉を思い出して──恵くんの手にあるカチューシャと同じものをもう一つ手に取って、反対側の手で彼の手を取ってレジへと向かう。
「先輩、俺が」
「大丈夫。私お金使わなさ過ぎて困ってたから」
私の言葉に申し訳なさそうに眉を下げた彼は「ありがとうございます」とお礼を言って手を離して何処かに行ってしまった。
会計が終わって辺りを見渡すもいなくて、調子に乗りすぎたかと後悔したけどもう遅い。
連絡をしようと店の近くのベンチへ座ってスマホを開くと『そこで待っててください。すぐ戻ります』と連絡が入っていて、慌てて立ち上がるとちょうど良く恵くんがお店に戻るところだったので声をかけた。
「すみません。待ちました?」
「ううん、待ってないよ。ジェットコースターでいい?」
私の言葉に頷いた恵くんはまた手を差し出してくれ、私たちは手を繋いでジェットコースターの待機列に並んだ。