デートへのお誘い

「んー……こんなんでいいかなぁ」

一人、部屋でスマホを掲げながら呟く。悩んでいるのは恵くんへ送るLINEの文章だ。
今日真希ちゃんから「私行かないから」と遊園地の入園券を貰ったのでデートに誘おうと何度も何度も打っては消しを繰り返してかれこれ一時間が経とうとしている。そろそろ眠くなってきたし……と思って送信ボタンを押してそのまま枕元に置いて横になった。

「あ、返事来てる」

目が覚めてスマホを確認すると『了解です』と返事が来ていて思わず口元が緩む。相変わらず業務連絡みたいではあるけれど、一歩前進したと思う。

「恵くんおはよう」
「おはようございます。土曜日、楽しみにしてます」
「え……あ、うん。私も楽しみにしてるね」

今日も朝から恵くんに挨拶をしに行く。顔を合わせていつも一言で終わる返事に続きがあると驚いて返事に詰まってしまった。いつもより話せたことが嬉しくて、でも緩みきった顔を見られたくはなくて返事をした後は小走りで教室へ向かった。

「良い方向に行ったみたいだな」
 
教室に着くとニヤニヤ笑った真希ちゃんがいて、その言葉に頷いてVサインを送ると思い切り頭を撫でられた。折角のセットした髪が……なんて思わないくらい心地良くて、真希ちゃんが同級生で良かったなと心から思ったが伝えたところで鼻で笑われる(そんな真希ちゃんらしいところも好きだけど)だろうから心に留めておいた。



金曜日の夜、真希ちゃんの部屋へ押し掛けて明日の服装のアドバイスを貰ってからしっかり頭から足先までケアをしてから眠りについた。
そしてきちんと約束の時間の二時間前には起きて準備をする。全ては恵くんに可愛いと思ってもらう為だ。折角好きな人の隣に立つのだから、可愛いと言ってもらえなくても自信が持てるように自分の好きな自分の格好とメイクをして待ち合わせ場所へと向かう。
待ち合わせの十五分前には着いたはずなのにそこには既に恵くんがいて、私に気付いて目が合うと逸された。それに負けずに近付いて行って声をかけると「いつもと雰囲気違いますね」と言われた。

「おかしい、かな?」
「いや、似合ってると思います」

可愛いとは言われなかったが、似合っているという言葉でも嬉しくてお礼を言うと手を差し出された。

「えっと……?」
「手。あっちフラフラこっちフラフラされて見失うのは嫌なんで」

私は一体彼からどう思われているのだと思いながらも手が差し出されたことは嬉しいので握ると握り返された。恵くんの体温が伝わって温かい。幸せってこういうことなんだろうなと突っ立ったまま思っていたら「行きますよ」と言われたので慌てて足を進めた。
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