わたしにとってきみは
好きだなと自覚したのはいつだったか。
私を見る目がただの幼馴染で船員という目線がいつの日からか熱を帯びていると感じて、それが嫌ではなくなった頃だったと思う。愛の言葉を囁かれることは全くなかったが、その目線だけで私は船長に恋をしてしまったのだ。だけど、私は卑怯者だからこの気持ちを口にするつもりは全くない。あくまで船には船員と船長でいたかった。そうでないとこの腹の中にあるドス黒い感情がいつか爆発して、ローに迷惑をかけるに違いないのに出来る限り一緒にいたいという私のエゴで今まで船にいた。けど、もう無理だ。
寝静まっている所を音を立てないように下船する。荷物は最低限の武器と換金出来そうな宝石を幾つかだけ。前もって何かしていたわけでもないから気付かれないで済みそうだ。すぐに立ち去らないと見つかる可能性が高くなるので、ありがとうと言うために足を止める訳にはいかない。手紙を置くこともなく足早に降りてから一目散に予定していた道を通り抜け、宿へと入ると事前に話を通していたこともありすぐに部屋に案内された。案内された部屋にあるベッドに身を投げると軋む音が聞こえてきた。いつも利用しているものとは違い大衆用のそれは少し硬いと思ったが、許容範囲内だから眠れると思った。思ったのだが、現実はそう簡単ではなかった。
いつもなら隣にローがいて、体温を感じながら眠っていたのがなくなったのだ。そりゃ寝つきが悪くなるのも仕方ないかとは思う。だが、それにしてもここまで寝付けなくなるとは思わなかったのだ。
「ごめん。ごめんね、ロー」
いつの間にか頬を伝う涙を拭うことなくやっと襲ってきた眠気に逆らうことなく溺れた。
ドアを勢いよく叩く音で目が覚め、あくびをしながらドアを開けるとそこには宿屋の女将さんとペンギンがいた。このペンギンは動物ではなく、人間だ。つい昨日まで乗っていた船に同じく乗っている船員でもある。
「どうかしましたか?」
顔も身長も髪型も髪色も声もW私Wを形成していたものが全部違う誰かになった私はドアを開けて訊ねる。ペンギンは謝罪と人探しをしていたと簡単に言ってから女将さんと共に隣の部屋へ向かって行った。しらみつぶしに探しているのだろうか。……多分、私を。代え難い存在だと思ってくれていたのだろうか。答えがわかることは一生ないのだろうのだろうと思いながら私は部屋のドアをゆっくりと閉めた。
悪魔の実の能力者になったことを伝えなくて良かった。――伝えたとしても、今の状況が変わることはないと思うけれど。
一人部屋で地図を広げて海軍がいそうな場所を確認する。早めに彼らの船に乗り込んでシャボンディ諸島へ向かいたい。出来ることなら海軍内部の情報も得られたらいいが……と考えたところで思考を停止させる。これから海軍になる気も海賊に戻る気もないのに不毛なことを考えている。記憶が全部消せればいいのになと呟いてから荷物を纏め、私は部屋を去った。