求める声
――「愛している、と言ってくれ」
鶴にそう求められて、私は口を噤む。何故私がその言葉を口にできないのか、そのときは分からなかった。今なら、はっきりと理由がわかる。求められてその言葉を口にすれば、意味が軽いものになってしまうからだ。
こんなはずではなかったのに、とどちらが言ったのだろうか。彼は歪んだ私の夢見た世界を愛しすぎているし、私も彼に出会えるこの空間を愛しく思いすぎていた。
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