無題
歌が聞こえる。大切にしていたものがなくなってしまい、それを嘆く歌。箱庭世界の存続を願う歌。本棚から引き出した記憶が無意識のうちに現れ、この空間に音を響かせているその旋律は、自分のことを歌っているようだな、と思った。
優しくて、苦しい。酷く恋しい。そんなあの子が語る物語をまた聞きたい。語る言葉を奪ったのは俺なのに、それをあの子に返してしまえば自分は自分で居られなくなることを知っている。
どうするのが正しいのか、今の俺には分からない。
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