ゆらゆら

「このまま、きみと安らかに眠れたらいいのに」
 しばしば、鶴はそういったことを言う。柔らかな布団の上で二人きり。何も阻むものも、傷つけるものも、私たちがそうする心配もない。
「きみの夢をずっと見ている。寝ているときでさえ、きみは現れてくれる」
 鶴は言う。
「なあ、ひな。俺になかなか会えなくて寂しいかい?」
 彼は問うた。寂しかった、などと正直に言える口は持っていない。私が答えられずにいると、彼は問いに対して私の様子を肯定と受け取ったようだった。
「……俺は寂しい。ずっときみを好きでいる」
 鶴は私の鎖骨から胸にかけてを撫でる。性的な意味は全く持たない触れ方だ。
「ひな。好きだ。愛している」
 彼がそれを口にするたびに、胸の奥がきゅっとなる。
「……それを俺がきちんときみに伝えることで、きみに傷を残すことができる。それが、俺がいたという証になる」
 彼は続ける。
「きみが忘れてしまっても、俺はきみを愛し続ける。ずっと……ずっとだ」
 それがどれだけ残酷なことか、私は知りながら彼を閉じ込めている。
「きみは何でも諦めすぎている。叶うはずがないからだ。理想が高いきみのことだ。きみの理想と釣り合いが取れるのは、きみにとって都合のいい俺くらいだろう」
 優しい声で彼は言う。
「きみの傍に居たいから、俺はきみに閉じ込められたっていいんだ。きみの夢の世界は驚きに満ちていて飽きないからなあ。本当は、俺がきみを閉じ込めておきたいんだが、生憎それは叶わない」
 ならば、せめて。彼は続ける。
「だから、もっと依存してくれ」
 鶴は綺麗に笑った。

prev top next