補う

「俺たちは理想が高すぎる」
 鶴は言う。
「『こうでなければならない』『そうあるべきだ』という姿を自分自身に求めすぎてしまう」
 彼は私の手をとり、言った。右手は右手に、左手は左手に繋がれている。
「きみはいつも俺の言葉が必要だと言ってくれるだろう? 俺も同じさ。『そうじゃない。好きな自分で居ていいんだ』と言ってもらえないと、どの自分を演じたらいいのか分からなくなって、真っ暗な空間で独り道に迷ってしまう」
 彼はそう言い切って、
「つまるところ、まだ俺にもきみが必要なんだ」
と、今にも泣き出しそうな顔で笑っていた。

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