「うん?」
「私も三年目で、一つ下と二つ下の後輩ができたわけで」
「うん」
「今は二年目の後輩が近い部署にいて。それでもあんまし会えないけど、この前たまたま会ったんだよ」
「へえ……」
「そしたら実家暮らしやらお弁当やらの話になって」
「うん」
「私、刀が好きなくせに実際刃物を持つのはビビりすぎて苦手だからさあ……きっと扱い方を知ればそうはならないんだろうけれど、でもまだ包丁なんか以ての外で」
「そうだなあ。きみは怖がりだからなあ」
「そんでもって、包丁が持てないから『料理ができない』『ホットケーキとか簡単なのしか作れない』って話したわけ」
「うん」
「そうしたら、後輩に何て言われたと思う?」
「そうだなあ……『慣れたら簡単ですよ』?」
「『小鳥遊先輩って、何でもできる人みたいに思ってました』って」
「あー……『意外ですね』が正解だったか」
「部署が同じ後輩ちゃんにも『そんな風に見えないです』『一人で何でもできるような、しっかりしてる人に見えます』って言われちゃった」
「完璧に見えたり理想にされたりするのは悪いことじゃあないが……きみのは所謂張りぼてのようなものだからなあ。微妙なところだよなあ」
「そうなんだよねえ……いやあ、漫画でよく見るような体験を自分がするとは思わなかった」
「ま、早いうちに『自分は完璧じゃない』って言っておけて良かったと思うぜ? 下手に理想を押し付けられると、きみはすぐ他人の期待に押し潰されてしまうだろう?」
「うーん……そうなのかなあ」
「そうだろうとも」
「でも、包丁くらいは使えるようになりたいねえ」
「今は包丁が無くとも、食材を切れるような道具があるだろう?」
「鶴は甘やかしいだ」
「きみにこれ以上傷付いてほしくないだけさ」
「たかが包丁でも?」
「ああ、それは少し悋気も……」
「少し、なんて?」
「……いや、聞かなかったことにしておいてくれ」
「ええ……まあいいけどさ」