すきすき

「私が嫌だと言っても、お前が私の手を離さなかったんだ!」
 ひなが声を荒げた。俺は微笑みながらそれをうんうんと聞いていた。
「……絶対に忘れてなんかやるもんか」
 ひなは泣きながら、呟くように言う。彼女の小さな手は、俺の腕をしっかりと握っていた。
「置いていかないで……一人にしないで……」
 可愛いなあ。可愛そうだ。俺は思う。元々俺はきみに望まれて、きみの夢に、きみの世界に降り立ったと言うのに。俺が親切心からあまり依存してくれるなよと忠告してやったにもかかわらず、手を離さなかったのはきみの方だと言うのに。
 ――今更、手放してなるものか。

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